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特集:恩恵少なきポイントサイトの行く末

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 企業からのの広告メールを受け取ったり、サイト内で買い物したりすると独自のポイントを獲得でき、貯めたポイントは商品券や現金などに交換できるポイントサイト。かつては、インターネットで手軽にお小遣い稼ぎができるサービスとしてもてはやされました。しかし、今では獲得できるポイントは雀の涙ほどしかなく、とてもお小遣いと呼べる恩恵などありません。経緯をたどると、ネット広告事業のめまぐるしい変化に翻弄されるポイントサイト運営会社の苦悩が見えてきます。

 今回の特集は、産声をあげてから20年が経過したポイントサイトの栄枯盛衰を取りあげます。

● お小遣いと呼べる恩恵があったのはITバブルの時だけ

 ポイントサイトがはじめて登場したのは、ITバブルが始まりかけた1996年頃でした。当時はポイントの価値が高く設定され、1ポイント1円換算でサービスを提供していました。広告メールに記載のアドレスをクリックするだけで5ポイントも入り、毎月1,000円程度は稼げました。また、企業が発行するメールマガジンの購読手続きをすると200円相当のポイントがもらえるなど、利用者にとって”おいしい”恩恵がずいぶんとあったものです。しかし、気前のよいサービスは長く続きませんでした。

 2000年に入りITバブルが終焉を迎えると、ポイントサイトに試練が訪れました。広告主である企業からのメール配信依頼が減少しはじめたのです。理由は、企業は広告メールを出しても期待したほどの売り上げに繋がらなかったためです。ポイントサイト各社は広告主離れを防ごうと、配信メールの単価を引き下げたり、同じ金額で複数回の配信を提供したりしました。

 広告配信の低価格化は、利用者のポイント獲得に影響を及ぼしました。1ポイントが0.1円換算に下がり、広告をクリックしても1ポイントしか入らくなってしまったのです。ポイントを現金に換えても1か月当たり300円程度にしかなりません。

● ITバブル崩壊で広告配信からアフィリエイト主体の事業展開に

 企業からの広告メール配信だけでは収益がままならず、ポイントサイト各社はアフィリエイトを提供するサービスと契約して広告収入を得る事業に転換しました。アフィリエイトとは、コンテンツ内に広告を掲載して、閲覧した人がその広告を経由して商品を購入すると売上げの一部を報酬として受け取れるしくみのことです。

 ポイントサイトの利用者が自社のコンテンツを通じて商品を購入をしたときは、購入金額に応じたポイントを付与します。そして、毎月商品を購入すると付与ポイントの料率を上げる特典を設けたランク制度を導入しました。これにより、ポイントサイトは、利用者がネットショッピングをするときは自社を経由して購入する方が得になるようにしたのです。

 事業収入の主軸をアフィリエイト報酬にしたことで、ポイントサイトから送られてくる広告メールも様変わりしました。これまでの配信メールでは、直接広告主のサイトへ誘導していました。最近は、「○○特集」や「○○キャンペーン」と題して収益性の高い商品を数多く掲載したアフィリエイト用のコンテンツを用意して、メール配信を通じて購入を促しています。

 事業収益をアフィリエイトでまかなうのは容易ではありません。成果報酬は薄利のため、報酬の高い商品または購入頻度の多い商品を重点的に売り込む必要があります。そこで目をつけたのが、クレジットカードや健康食品です。クレジットカードはアフィリエイトの中でも成果報酬が高いことで知られ、カードの発行が成立すると1件につき数千円の報酬が入ります。また、健康食品は数百円の成果報酬ながら繰り返し購入する人が多く、継続的な収益が見込めるとされています。

 しかし、先行き不透明な経済状況の中では利用者の財布の紐が固く、収益性の高い商品の購入を推し進めるも苦戦しているのが現状です。

● ミニゲームの提供やクラウドソーシングとの連携も

 さらなる収益確保として、新たなサービスを充実させていきました。そのひとつが、ブラウザ上で動くミニゲームです。パズルやクイズのようなミニゲームを提供して、ゲームをプレイするとポイントを付与するようにしたのです。収益源は、ゲーム画面の周囲に表示されるアフィリエイト広告です。利用者が毎日ゲームにアクセスする際に広告を見せるようにして、アフィリエイト収入につなげています。

 また、クラウドソーシング会社と提携して、単純作業の請け負いを代行するサービスも打ち立てています。利用者に短時間でこなせる作業を行わせ、報酬をポイントで支払います。主な作業は、名刺画像を見ながら氏名や住所をテキスト化したり、特定のテーマで短文記事を作成したりするなどです。

 いずれのサービスも、利用者にとって満足できるポイントは稼げません。ゲームは1回で数ポイント、名刺入力も正しく入力できたと判定されたときに数ポイントが入る程度です。短文記事作成は1つ書き上げても数十ポイントしか獲得できせん。努力して複数の記事を書いても時給換算にすると100〜200円程度にしかならず、労力に見合わないのが現状です。これでは誰も請け負わなくなる日が来るのも時間の問題でしょう。

● スマホ向けサービスに注力

 現在、ポイントサイト各社はスマートフォン向けのサービスに力を入れています。スマートフォンに対応したサイトのほか、専用アプリを開発してサービスへの利用を促しています。

 しかし、スマートフォン向けのサービスを展開しても内容そのものに変化はなく、収益源もアフィリエイト頼みです。また、専用アプリを使ってのサービス提供にはリスクがあります。利用者に報酬を与えるアプリは、配信元の規約に違反する可能性があるからです。せっかく開発したアプリも配信元の審査に通らなかったり、合格してもその後削除措置を執られる場合もあるのです。

● あの手この手を尽くすも利用者に満足な恩恵は与えられず

 今のところ、大手のポイントサイトは事業を継続するだけの収益は得られているようです。しかし、ポイント還元が少ないままの状況が続けば、いずれ利用者から見限られてしまうでしょう。利用者が満足するような高いポイントを与えられるサービスをどう打ち立てていくか、ポイントサイトの模索はこれからも続きます。


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