よもやま話:ありきたりな「○○のための×つの方法」に危惧
タイトルから自分に役立ちそうなことが書いてあるだろうと思ってクリックすると、構成にまとまりがなかったり、薄っぺらな内容にがっかりすることがあります。 こうした記事があふれかえればブログ記事の質が低下し、ネットのコンテンツが衰退しないか気がかりです。 <「×の方法」のような記事が増えた背景>「自分を元気づけるための3つの方法」のような記事は、まとめ記事あるいはキュレーションと呼ばれています。まとめ記事は以前から雑誌の特集で取りあげられていますが、最近はブログ記事で多く見かけるようになりました。 ブログでまとめ記事が増えた理由として、次のようなことが挙げられます。 ● 執筆経験が少ない人でも書きやすい まとめ記事は、タイトルに沿ったテーマについて、ネットで調べたり、知っている知識を並べるだけで記事ができあがります。コラムや論評のように、論理的な話の展開を考えなくてよいので、執筆経験のない人でも比較的容易に記事を作成できます。 まとめ記事は情報提供型の記事として人気が高く、需要の増加に伴い量産されるようになってきています。 ● 釣り文句がつけやすくパターン化しやすいタイトル 興味をそそるようなタイトルを見せてクリックを促し、本文に誘導させる方法をメディア用語で「釣り」といいます。週刊誌の見出しタイトルは、釣りの典型です。 「自分を元気づけるための3つの方法」も、釣り文句として効果があります。特に、「3つの〜」のように数字をつけると、厳選された貴重な情報が書いてあるかのような印象を与えます。 また、「○○する×の方法」は、○と×の部分を置き換えるだけで簡単にタイトルが作れます。そのため、工夫せずとも注目されやすいタイトルができてしまうのです。ブログ記事の投稿に慣れてくると、このタイトルを安直に使うようになり、ワンパターンなタイトルばかりになっていきます。 ● 背景に記事コンテンツの需要が急増 ここ最近、スマートフォンで読めるニュースサイトが脚光を浴びています。こうしたサイトでは、読者にウケるブログ記事を求めています。それも頻繁に更新するため、大量の記事を確保しなければなりません。 人の目を引き、大量に作れる記事として適しているのが、タイトルに「○○するための×の方法」とつけたまとめ記事です。その結果、ワンパターンなタイトルのまとめ記事がネット中で氾濫しているのです。 <人を魅了しない理由>量産されているまとめ記事が、読み手を魅了しないのは次のような理由があります。 ● 調べた情報を列挙しただけ まとめ記事で列挙する情報は、数だけあってもありきたりなものばかりでは何の参考にもなりません。しかも、脈略や方向性がなく、単に情報を箇条書きしただけでは、記事そのものにおもしろみを感じないため、読んでがっかりします。 読者に有益となる情報を吟味していない記事ほど、読み終えるとむなしい気分になります。 ● クリックさせたい意図が見え見えの大げさなタイトル 本文の内容に沿った的確なタイトルをつけた記事は読み応えがあり、気持ちのよいものです。なぜなら、タイトルからどういう内容の記事なのかをふまえて本文を読み進められるからです。 職業ライターは、タイトルの重要性を知っているので、タイトルは最初は仮題にして、完成した原稿を読み返しながら最適で簡潔な表現を用います。しかし、安直なまとめ記事を書く人は、クリックして本文へ誘導させることを優先して、大げさなキャッチコピーを冒頭につけ、お決まりの「×の方法」で締めくくろうとします。 本文の内容に見合わない誇大な表現をタイトルに使えば看板に偽りありの記事として受け取られます。結果として、読み手は期待はずれの内容に不愉快な気分を味わってしまうのです。 ● 落としどころがなく読み応えがない 雑誌の特集などで見かけるまとめ記事は、情報を列挙したあとにアドバイスや注意点など話の落としどころをつけています。しかし、執筆経験があまりない人が作るまとめ記事は、情報を列挙してそれで終わりになっている場合が多いです。 まとめ記事は、書き手が自分の意見などを付け加えなければ独自性がなく読み応えがありません。「列挙したからあとは勝手に理解して参考にしてくれ」のような終わり方では、読者は中途半端な締めくくりに歯がゆさが残ってしまうのです。 <求められる書き手の技能向上>インターネットで配信される記事コンテンツは、メルマガからブログへとバトンタッチをしながら大きく成長してきました。次は、ニュースメディアとして新たな飛躍を遂げようとしています。 ニュースサイトの人気でブログ記事の需要は今後ますます増えると見込まれています。その一方で、骨太の記事を書ける人の数は追いついていません。「○○のための×の方法」のようなワンパターンなタイトルをつけた中身の薄い記事が氾濫すれば、せっかくの記事コンテンツの発展を衰退させないか心配です。 安直なまとめ記事がその足を引っ張るようなことにならないよう、記事を書く側も執筆のための技能を向上していかなければならないと考えます。
2015年2月27日発行 第367号
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