特集:インターネット気になったニュース2014インターネットやIT関連もさまざまな出来事がありました。ビットコインを扱うMt. Goxの破たんから始まり、Windows XPのサポート終了、LINEアカウントの乗っ取り・なりすまし被害など、挙げればきりがありません。 今年一年に起きたインターネットでの出来事を振り返る例年恒例の特集、今回はお騒がせなものを選びました。 <インターネットでの出来事>● 自らの墓穴で自白したPC遠隔操作事件 他人のパソコンを遠隔操作して、所有者になりすまして掲示板などに殺人予告を書き込んだ事件は、ネット中で大きな話題となりました。この事件は当初、警察がIPアドレスの情報に頼りすぎてパソコンの所有者を犯人として逮捕しました。しかし、誤認逮捕と判明して大きな批判を浴びました。その後の捜査から、パソコンに遠隔操作用の不正プログラムを仕組ませたとして、片山祐輔容疑者が逮捕されました。片山容疑者は拘留中も容疑を否認し続け保釈されました。 検察側も明確な物的証拠が得られず、このまま裁判に入るかと思いきや、予想もしない展開で事件は終結へと向かいました。保釈中に片山容疑者は捜査をかく乱させようとして、江戸川の河川敷に犯行に使ったUSBメモリーを埋めたところを、尾行中の警察官に目撃されました。警察の聴取で片山容疑者は否認から一転して、一連の事件は自らの犯行であることを自白しました。裁判で、片山容疑者は懲役8年の実刑判決が言い渡されました。 インターネットやコンピュータには人並み以上に詳しい半面、俗世間にはまったく疎い容疑者の行動が仇になり、自ら墓穴を掘る結果を招きました。真犯人の存在を信じていた担当の弁護士や、多くの支持者を裏切った愚かな行動とお粗末な結末に、後味の悪さを残しました。 ● 子どもの個人情報の価値が浮き彫りになったベネッセの顧客情報流出事故 教育関連事業を手がけるベネッセで6月、自社運営のサービスに登録している顧客情報のデータが外部に流出する事故が発生しました。流出した個人情報は約3500万件に及び、その中には子どもの個人情報も含まれていました。その後、流出した情報は名簿業者を転々として、ジャストシステムにわたりました。ジャストシステムは手に入れた個人情報を使って教育サービスを宣伝するためのダイレクトメールを送付していました。 ベネッセの個人情報流出により、子どもの個人情報は大人以上の価値がもっていることが知られることになりました。教育関連事業を手がける企業にとって、子どもの個人情報はのどから手が出るほどほしい情報で、一人当たりの情報単価は大人の何倍もする実状も明るみなりました。子どもの個人情報が手に入れば、成長にあわせて学習教室や商品案内のダイレクトメールを長期間にわたり送れるなど、利用価値が大人以上に高いためです。 流出させたのは、顧客データベースを保守管理している外部のシステムエンジニアでした。供述によると、容疑者は携帯電話をパソコンに接続すると顧客データベースから個人情報を根こそぎコピーできことを偶然見つけ、長期間にわたって犯行を繰り返していたといいます。 今回の流出事故で、ベネッセは再発防止策や顧客への弁済などに巨額の特別損失を計上し、営業収益が初の赤字に転落しました。金銭的な損失よりも、社会的信用の失墜がベネッセにとって何より大きかったでしょう。 ● 賛否が分かれたまんだらけ万引き犯の顔写真ネット公開警告 古い漫画本やフィギュアの販売店「まんだらけ」で8月、28万円の価格をつけた鉄人28号のブリキ製玩具が万引きされる事件がありました。犯人の姿は店内の防犯カメラに写っていたため、まんだらけは顔写真にモザイクをかけた警告文を店に張り出すほか、ネットでも公開しました。警告文には、指定期日までに返却しない場合はモザイクを外した顔写真を公開すると書き添えてありました。 まんだらけによるこの警告の仕方には賛否が大きく分かれました。たとえ犯罪行為であっても、被害者が一方的にインターネット上に犯人の顔を公開することは許されるものではないという意見もあれば、万引き行為への抑止力につながるとして容認すべきであるとの意見が飛び交いました。また、誤認の場合は名誉毀損に該当するおそれもあるため軽はずみであるとの見解や、地域で起きた犯罪行為を世界中に指名手配するかのような行為に異議を唱える声も上がりました。 警察からの要請もあり、警告文に書かれていた顔写真の公開は見送られました。その後、犯人が逮捕され、東京地裁で懲役1年執行猶予3年の判決が言い渡されました。 店側は、これまでに万引き被害で幾度も辛酸をなめてきました。こうした経緯から、今回の一件では犯人の顔写真を公開するという強硬手段に打って出たのでしょう。だからといって、顔写真の公開に一方的な正当性を主張して、ネットで人をおたずね者にする行為は共感や同情を得られません。最も問われるべきは万引き犯ですが、店側も反省すべき点はあると考えます。 ● コンビニ店員への土下座強要動画で露呈した加害者の歪んだ道徳観 コンビニ店員とのトラブルで腹を立てた客が、店長らを自宅へ呼んで土下座を強要し、そのときの動画をネットに公開した事件は大きな波紋を呼びました。箱詰めのタバコをお詫びとして要求して受け取ったたため、警察は恐喝の疑いで即刻逮捕に踏み切りました。 土下座を強要した当事者にとっては、店員が不手際をしたのだから店長らは土下座して謝罪するのは当然であり、一連の行為は人から共感されると勘違いしたのかもしれません。一部始終を撮影してネットに公開した動機はわかっていませんが、閲覧した人から賞賛の声が上がり、英雄扱いされるとでも思ったのでしょう。しかし、土下座の強要や金品の恐喝は犯罪行為であり、支持などされはしません。それを理解していないのは、あまりにも世間知らずの度を越えています。 犯行に及んだ客らは裁判で執行猶予つき懲役刑の判決が言い渡されました。自らの歪んだ道徳観が身を滅ぼした、哀れで迷惑な事件でした。 ● 妖怪ウォッチと東京駅100周年Suicaで暗躍するオークション転売者への反感 子供たちの人気を集めたアニメ妖怪ウォッチ、それを商品化した製品の発売日には、子どもを含む大勢の人が列を作りました。せっかく並んでも、売り切れて買えなかった子どももいたほどです。その一方で、インターネットオークションでは発売日に手に入れた商品をさっそく出品し、高値での取引が行われていました。 これと同じような光景として、12月には東京駅開業100周年を記念した限定Suicaを東京駅構内で販売するイベントがありました。前日から徹夜組が列を作り、当日の朝には9000人以上が押しかけました。駅周辺は大混乱で駅職員の不手際もあり、7,000枚を販売した時点で中止を余儀なくされました。この限定Suicaもインターネットオークションですぐさま出品され、20倍以上の高値で取引されました。 どちらの場合も、列に並んだのはお目当ての商品を買いたい人だけでなく、オークションに出品して荒稼ぎをしようとする転売目的の人が大勢いたのです。そのため、本当にほしい人が商品を買えない不条理な状況を作り出しています。 オークションで転売して金儲けをする一部の利己的なな輩のために、商品の販売が妨げられるのは望ましくはありません。販売側だけでなく、オークションを運営する側も今後何らかの対応をとってほしいと願います。 <メーリングリスト関連の出来事>メーリングリスト関連では、かつての大手無料MLサービスを運営してきたYahoo!、GMOメディア、シナジーマーケティングで新しい動きや節目を迎える出来事がありました。 ● Yahoo!グループが終了。10年あまりのサービスに終止符 freeml, Infoseek MLと並んで無料メーリングリストの一角をなしていたYahoo!グループが、5月にサービスを終了しました。長い間、システムの更新もなく、遠からずにサービスがなくなるのではないかと思っていました。今年、そのときがとうとう訪れたという印象です。 Yahoo!グループの終了は昨年から告知されていました。それもあり、freemlやサイボウズでは、移行先としての受け入れ体制を整え、利用者の獲得に力を入れていました。 大手無料メーリングリストはこれでfreemlを残すのみとなりました。 ● GMOは新サービスiroriを開始 GMOメディア運営のfreemlは今でも健在ですが、これとは別にスマートフォン向け新サービス「IRORI」を開始しました。 IRORIは、イベントの企画・開催を目的としたサービスです。専用のアプリをダウンロードして登録すると、自らイベントを企画して参加者を募集することができます。また、募集しているイベントのグループに加わると、参加者同士でメッセージのやり取りや写真を掲載することもできます。 IRORIは、freemlの弟分のようなサービスといってよいでしょう。今後の発展が楽しみです。 ● シナジーマーケティングがヤフーの子会社に 無料メーリングリストサービス「Easy ML(後のInfoseek ML)」を運営し、楽天に売却後はメールマーケティング事業を手がけてきたシナジーマーケティングが、ヤフーの子会社として次の一歩を踏み出しました。 シナジーマーケティングは、創業時はDNS(データネットワークサービス)という合資会社から始まりました。株式会社となってからはインフォキャストと改名し、無料・有料メーリングリスト事業で急成長を遂げました。メーリングリスト事業を楽天に売却後は、メールマーケティングシステムの開発で業績を上げ、現在のシナジーマーケティング株式会社に社名を変更して事業を拡大していきました。 ヤフーの一員となり、どんな新しいビジネスを展開していくのか楽しみです。
2014年12月28日発行 第365号
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