教えて先輩:天皇陛下の写真をネットに投稿するのはいけないの?天皇陛下の写真をネットに投稿する行為の是非について、私なりの見解を述べます。 ● 世代で異なる天皇陛下の受け止め方 天皇は、戦前は国家元首であり神格的な存在でした。戦後は象徴として位置づけられ、昭和天皇が人間宣言をして以後、国民に身近な存在となりました。平成に入ると、現在の天皇陛下は国民と接する機会も多くなり、より親しみが増しました。 時代とともに天皇の役割も変わっていったために、生まれ育った時代によって天皇陛下の受け止め方に違いがあります。崇高な存在と捉える世代もいれば、身近ではあっても特別な存在と捉える世代、ふれあう機会に恵まれるほどの身近な存在と受け取る世代もいます。これら世代間の認識の違いが、今回の騒動の発端となったといえます。 天皇陛下に対する認識は画一的ではないという点を、私たちはふまえておく必要があります。 ● 頭ごなしに非常識を唱えるのは不適切 今回の件で、天皇陛下の写真をTwitterで投稿した高校生を非常識と頭ごなしに非難した人もいるようです。しかし、これは説得力に欠けます。 すでに述べたように、天皇陛下のとらえ方は世代によって異なります。写真を投稿するのは不謹慎きわまりないばかりか厳罰にしても目に余る大罪と捉える人もいれば、そこまで大げさではなくとも家族や友人の写真と同じ感覚で投稿するのは控えるべきと考える人もいます。そして、現代では天皇陛下の写真を投稿するのは特別悪いとまでは思っていない人もいるでしょう。 自分が教育を受けたときの価値観や論理を一方的に押しつけて投稿者を非常識呼ばわりするのは行きすぎた行為です。当事者である投稿者は高校生です。自分とは天皇陛下に対する認識の違いがあることを念頭に置いてから判断するのが先決です。 ● 天皇陛下の写真をネットに流すのはいけないのか 天皇陛下の来訪写真をネットに流してもよいのか、今回の騒動に限った私の見解を述べます。 私は戦後の昭和に生まれた世代です。このニュースを初めて読んだとき、天皇陛下の写真をネットに投稿するのは好ましくない行為と受け取りました。しかし、投稿者が高校生である点と、投稿した写真を一目見たあとで考え方が変わりました。 私の見解は、「天皇陛下の写真を投稿するのは普通はするものではないが、私生活ではなく公務の中での出来事でもあり、今回の件は大目に見てもよいだろう。」です。 投稿された写真には、天皇・皇后両陛下が並んで写っており、テレビでは見せないほどの朗らかな笑みを浮かべていました。この写真は残念ながら投稿者本人が削除してしまったため、今では他の人が転載したものを画像検索しないと見ることができません。 投稿写真は両陛下の品格を下げるようなものではありません。まして、隠し撮りではなく正面から撮影したものです。目の前で両陛下の姿を見たなら、高校生の世代ならきっとためらうことなく純粋な気持ちで写真を撮り、Twitterに投稿するだろうと思いました。スマホで写真投稿が日常的な平成世代では、天皇陛下は昭和世代より身近な存在に感じます。だからこそ、今回の投稿行為は目くじらを立てるよりも、寛容な受け取り方をするほうが賢明と考えました。 ● 貴い人の写真は投稿せず自分だけの宝物に 今回の写真投稿については寛容に捉えましたが、大人の考えを持ち出せばやはり控えるのが適切です。 目通りの機会がない人の写真はむやみにネットに投稿せず、自分だけの宝物にするのが望ましいです。 めったに接することのない人の写真を撮れば、人に見せたくなります。しかし、こうした写真は誰にでも見せてもよいとは限りません。場合によっては常識から逸脱した行為と受け取られます。天皇陛下の写真であれば憤りを感じる人もいるでしょう。 大切な思い出になるような写真は宝物と同じです。貴重なものとして大事に扱うのがよいでしょう。見知らぬ人に見せびらかすのではなく、身近な人にだけにそっと見せるところまでが許容範囲です。 ● アイドルや有名人のツーショットも同じ 何かのきっかけで、アイドルや有名人と記念撮影をしたときの写真も、ネットに投稿せず自分だけの宝物にしておくのが望ましいです。記念写真を撮ればうれしさのあまり、いろいろな人に見せたくなるでしょう。しかし、その気持ちは抑えておかないと思わぬトラブルに発展します。 アイドルの場合は、所属事務所の方針もありツーショットの写真をネットに投稿しないよう自粛を求めている場合があります。事前に許諾を得ておかないとトラブルを引き起こかねません。また、ネットに投稿して不特定多数の人に見せてしまうと、ファンから心ない言いがかりをつけられたり、ねたみから攻撃を受けることもあります。 アイドルにしても有名人にしても、記念写真は個人的に許したものです。不特定多数の人に見せてよいとは思っていません。許諾を得てないときは、ネットに投稿するのは自粛しなければなりません。 天皇陛下やアイドルの写真撮影について、次の記事が参考になります。 ● Twitterでの投稿は友達以外の人も見ることを忘れずに 今回の天皇陛下の写真投稿では、自分が投稿した写真が大勢の人に見られ、広まっていくことに気がつかなかったのかもしれません。身近な人だけに見せて終わるつもりだったとも推測できます。しかし、実際は予想もしない事態に発展し、本人は困惑したことでしょう。 自分がTwitterに投稿した内容は基本的にフォロワーだけが読めるのではありません。インターネットを利用している誰もが閲覧できるます。また、フォロワーがリツイートをすれば、自分の投稿が広まっていきます。この点を十分理解してTwitterを利用していくことを心がけていかなければなりません。 天皇陛下の写真を投稿した是非を巡る一連の騒動は決して他人事ではありません。誰もが気がつかずに起こしてしまいがちです。尊いものや大事なものは、むやみに人目につかせない宝物にするという気持ちを大切にして、慎重に扱っていくべきとあらためて教えてくれた出来事といえます。
2014年6月6日発行 第359号
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