特集:インターネット気になったニュース2013今年は流行語大賞が豊作といわれるほど多く、ドラマ「半沢直樹」の「倍返し」や予備校講師の「今でしょ」は特に話題に上りました。そして、インターネットでも大きな出来事が数多くありました。昨年に引き続き、2013年に起きたインターネットの出来事をまとめます。 ● 不正アクセスによる大量アカウント情報流出事故が多発 クラウドサービスへ不正アクセスして利用客の個人情報やアカウント情報を盗み出す事件は今年も多発しました。大規模なサービスへの不正アクセス事件が多く、被害を受けた企業は対応に追われました。 皮切りは、春に発生したクラウドサービスのEvernoteでした。Evernoteはアカウント情報が流出した可能性を確認してすぐに大英断を下しました。流出被害の対象を問わず、すべての利用者のパスワードをリセットして再設定をしてもらう措置を決行しました。Evernoteは100年企業を目指す壮大な計画を立てており、不正アクセスがあったときも躊躇せずに即時対応をとることで被害を最小限に防ごうと考えたのです。この決断はEvernoteのCEOによる英断として注目を集めました。しかし、パスワードのリセット措置は急であったため、利用者に混乱も与えました。緊急措置の手順や再設定の告知方法は今後の課題となりそうです。 そして、Photoshopで知られるアドビシステムズも秋頃に大規模な不正アクセスの被害に遭いました。1000万規模に及ぶアカウント情報の流出に加え、自社製品のソースコードの流出も確認されています。アカウント情報の被害は現時点でも正確に把握されておらず、今後さらに増えると予想されています。アドビのソフトやクラウドサービスは世界中で利用されており、パスワードの使い回しなどで二次被害の危険性もあり得ます。アドビ社は流出が確認されたアカウントについてはパスワードのリセットと再設定を求める通知を出しています。これを受けて他のクラウドサービスやポータルサイトでも同様のアカウント名を使っている人には自社サービスのパスワードも変更するよう呼びかけています。
● 波紋を巻き起こしたアメリカのネット盗聴 「まさかアメリカが国家ぐるみでインターネットを盗聴していたとは」と世界中に衝撃を与えたのが、米国家安全保障局(NSA)の元契約職員エドワード・スノーデン氏が暴露した「スノーデン事件」でした。テロ防止を大義名分として、アメリカは極秘に個人情報を入手したり、自国内に拠点を持つクラウドサービスやソーシャルネットワーキングサービスでやり取りされている情報を盗み見していたことが明らかとなりました。この事実は、アメリカへの国家的信頼を失うばかりか、アメリカにあるデータセンターやクラウドに情報を保存すれば盗み見される不安を与えました。現在、スノーデン氏はロシアに身を置いていますが、今後どうなるのかは未定です。アメリカは即時身柄を引き渡すよう要求しています。
● 静かに終わった初のネット選挙運動 今年の参院選からインターネットを使った選挙運動が解禁されました。満足に審議されずに法案が可決成立し、何が認められて何がいけないのかも十分周知されないままスタートしたため、候補者も有権者も手探りのネット選挙運動となりました。ネットでの選挙運動を手がける企業もさまざまなトラブルを想定しながら候補者への支援を行うなど、慎重姿勢で臨んでいました。 参院選の投票率が低かった背景もあいまって、大きなトラブルはなく、盛り上がりのない静かなネット選挙運動でした。ネットに不慣れで自らの失言が広まるのを回避したい候補者は積極的にネットの活用をせず、ネットでの選挙運動の効果を見いだせなかったことも理由としてあった模様です。その後の分析でも、ネットを使った選挙の効果は明確にわからず、選挙にネットを活用していくにはさらなる検討が必要のようです。
● 深刻化する非常識を超えた悪ふざけ投稿 今年は35度をこえる酷暑日が続く厳しい夏でした。この暑さの中、社会規範を逸脱した振る舞いをしてその様子を写真に撮り、SNSへ投稿する事件が相次ぎました。飲食店のアルバイト従業員が、厨房にある食肉保存用の冷蔵庫に裸で入り込んだり、スーパーの冷凍ケースの中に入って全身横たわるなどして、設備の入れ替えや営業中止を余儀なくされる事態にまで発展しました。飲食店やスーパーは衛生面が最も重要なだけに、こうした振る舞いは営業に大きな支障をきたします。行動を起こした張本人は事の重大さをまったく自覚していなかっただけに、事前教育対策が急務であることを知る出来事でした。
また、ドラマ「半沢直樹」で人を土下座させるシーンに影響を受けてか、客が店員に土下座を強要させる行為が問題視されました。中でも、店員に土下座させた上にそれを写真に撮り、SNSに投稿した事件は大きな波紋を呼びました。その後、土下座をさせて写真を投稿した客は強要罪の容疑で逮捕されました。 年々、自制のきかない度を超えた行為がエスカレートしてきており、それをネットに投稿して誇示しようとする傾向が見られます。これらは英雄的行為ではありません。戒められて然るべき非常識な振る舞いです。 ● トラブルが多発する歩きスマホ 駅構内や路上を歩きながらスマートフォンを操作する「歩きスマホ」が問題視され、事故や被害をもたらす事件も起き始めました。スマートフォンの操作に熱中するあまり、駅のホームから転落してけがをする事故が増加しています。さらに、周囲に無防備となり痴漢に遭ったり、スマートフォンをひったくられる被害も出ています。
こうした中、歩きスマホをしないよう対策を講じる動きも出てきています。NTTドコモは、歩行中の振動を検知すると自動的に警告が表示される歩きスマホ防止用のアプリの配布を開始しました。
歩きスマホは、他の人にぶつかるなど事故やトラブルのきっかけとなるだけに、自粛を呼びかける活動が求められます。 ● freemlが無料メッセージサービスを始めるも一ヶ月で閉鎖 最後はメーリングリストに関する話題をひとつ。今年はfreemlの事業に大きなニュースがありました。 freemlは、メーリングリストのメンバー同士でメッセージ交換や通話のできるスマートフォン用アプリ「freeml トーク」を発表しました。GMOもこれにより、LINEに代表される無料通話サービス事業の参入を果たしました。ところが、このfreemlトークはLINEと機能的に遜色がありませんでした。そのため、キャンペーンを実施しても利用者を増やせず、たった2ヶ月でサービスを打ち切りました。 その後、freemlは専用アプリの不具合などがあり、苦難の道を歩み始めています。メーリングリスト事業の今後が見えてこないだけに、見通しの見えない状況がしばらくは続きそうです。 来年はソチ五輪があり、消費税率8%スタート、そしてワールドカップブラジル大会開幕など大きな出来事が立て続けにあります。IT関連もウェアラブル端末の登場もささやかれているだけに、何が起きるか楽しみです。
2013年12月8日発行 第353号
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