特集:続・メーリングリストの歴史今回の特集は、2006年から2013年までのメーリングリストの歴史を紐解いていきます。 ● ティーンズが道を開いた携帯メーリス文化 2006年頃から、メーリングリストを略してメーリスと呼ばれ始めました。火付け役は10代で、仲間同士の連絡やメールチャットとしてメーリングリストが使えると広まったときに愛称がつけられました。 この時期は今でいうガラケー全盛期で、親指でボタンを押して文字を入力してメールを送信するのが当たり前でした。メーリスを作ってチャット感覚のメッセージを送りあうのがちょっとしたブームにもなりました。ティーンズならではのメーリングリストの発展を果たした時期でした。 携帯メールを使ったメーリス文化の発展とともに、携帯向けメーリングリストサービスの新規参入も相次ぎ、インターネットプロバイダ大手の@niftyやベンチャー企業が続々とサービスを始めました。こうしたサービスは、メーリングリストという名称を用いずに、メーリスという呼び方を前面に打ち出していました。メールだけでなく、スケジュール機能やミニブログ機能など、工夫を凝らした事業展開を推し進めていき、ユーザーの獲得に力を入れていました。どのサービスも無料で利用できるのが当たり前だったとことはいうまでもありません。 2006年から2009年ごろまでは、まさにメーリス全盛時代でした。会社内でも20代の社員の間でメーリスという呼び方が浸透しました。今までは堅苦しいイメージのメーリングリストでしたが、メーリスをきっかけにカジュアルなイメージへと変わっていきました。 ● 業務向けに特化したメーリングリストサービスの発展 一方、有料メーリングリストサービスでは業務向けに特化したシステムに活路を見いだしました。グループウェアや共有機能を豊富に備えた高機能指向で利用者の獲得を目指し、業績を収めています。 また、Lyris ListMangerなど高機能メール配送システムは、twitterなどSNSとの連携機能を強化させたシステムの開発を手がけ、現在でも時代にあったソフトウェアの提供を進めています。 メーリングリストを業務で使う有用性は今なお高く、業務向けのシステムそのものは確固たる位置づけを保っています。 ● 携帯メーリングリストサービスの栄枯盛衰 携帯電話専用のメーリングリストサービスは2008年をピークに人気を集めました。ベンチャー企業がサービスを展開するだけでなく、大手のfreemlもアンケートやスケジュール機能を強化させて携帯シフトを推し進めていきました。 しかし、この携帯電話専用のメーリングリストも2010年にはバブルのように急激に衰退し始めました。引き金は、スマートフォンの爆発的な普及とtwitter, facebookの日本上陸です。 iPhone4が登場して以来、スマートフォンの人気は急上昇しました。そして、mixiにかわる新たなコミュニケーションツールとして登場したtwitterやfacebookは、スマートフォンから気軽にアクセスできる利便性が評判を集め、利用者が急増しました。これまでの携帯電話はガラケーと称され、古い時代の産物として扱われるようになり、携帯電話専用のサービスは続々と撤退へ舵を切り始めました。携帯電話専用のメーリングリストサービスも例外ではなく、次第に姿を消していきました。 ● スマートフォン対応かサービス廃止の二者選択 2011年になると、メーリングリストのサービスもスマートフォンへの対応が急がれました。freemlは先端を切って、専用のアプリとスマホ対応のウェブサイトを構築させました。 一方、twitterやfacebookの普及をきっかけに、事業の選択と集中を決断したのが楽天でした。長年親しまれてきたinfoseekメーリングリストの廃止を決定し、EasyMLから続いてきたメーリングリスト事業に終止符を打ちました。楽天は、メーリングリスト以外にもホームページ開設サービスなど、今では使われなくなったサービスをすべて終了させる大掃除を決行しました。 メーリングリストも定着しているツールではありながら、時代の流れに見切りをつけられる対象になってしまいました。 ● SNSの進化から取り残されるメーリングリスト SNS全盛の時代に突入した2011年以降、LINEなど無料メッセージアプリも登場し、インターネットでのコミュニケーションはさらに多様化しました。サークルの連絡でメーリスを使うという会話はたまに聞かれますが、それすらもLINEに取って代わりつつあります。メーリングリストもいよいよ影の薄い存在となってきました。 2013年、freemlはLINEと同様の機能をメーリングリストサービスにもたせたfreemlトークを打ち出しました。通話機能もあり、既存のメーリングリストと無料通話アプリの融合を図った新しい試みでした。しかし、思うような需要が見込めずにわずか半年でサービスを終了しました。 LINEやfacebookを使った交流は、時代の流行で活用する人が多い反面、SNS疲れという精神的な疲労も大きく、しだいにやめてしまう人も少なくありません。閉じられたコミュニケーションの需要が徐々に高まっており、メーリングリストもこの点では優位性があります。メーリングリストの復権こそないものの、存在意義は今なお健在であることはたしかです。 今後のメーリングリストは、サービスを維持するためにどのように進化させるかが課題です。既存の概念を維持してそれなりにはやっていけるかもしれません。しかし、安泰は厳しいでしょう。枯れた技術とならないための新たな進展が求められます。
2013年10月8日発行 第351号
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