コラム:「重要」と書いて広告メールを送るのはオオカミと少年のはじまりこのようなはた迷惑なメール配信は、ネットサービスを手がけるIT企業に多く見られます。今回のコラムは、重要と書いて広告を送りつける一部のIT企業の非常識な振る舞いについて述べます。 ● 重要は事務的な用件につけるもの 件名に「重要」とつけるのは緊急を要する内容や、事務的に大事な用件のときです。たとえば、パスワードの変更依頼やシステムの緊急メンテナンス、運営会社の社名変更のように、必ず一読してほしい業務上の連絡に使うのが基本です。読み手にとって重要ではない内容に、意図的に「重要」とつける行為は常識を疑われます。 ● 顧客を欺くのは信義に反する非常識 人を作為的にだましたり、欺く行為は道徳的にも社会的にも問われます。まして顧客に対して行えば不信感が芽生えます。 顧客は、送られてきたメールに重要と書いてあれば大事な内容と受け止めて真剣に目を通すでしょう。しかし、それが単なる通常の広告とわかればどんな思いをするか容易に理解できるはずです。だまされた気分を味わったときの不快感は簡単に消えません。 顧客を欺く行為は信義に反する非常識です。罪悪感なしに行っていれば、もはや企業倫理そのものが問われるでしょう。 ● 「注目」と「重要」は別物 メールの件名に「注目」とつけることはよくあります。この「注目」と「重要」を同じ扱いにしてはいけません。「注目」は見てほしい人を限定できますが、「重要」は人に強いるだけの影響力を与えます。 「注目」では人が見てくれないから「重要」にしようと考えるのはあまりにも不謹慎です。容認の一線を越えて戒めを受ける行為として受け取られます。 ● 利用者の信用は取り戻せない 企業が非常識な行動をすれば、顧客からの信用を確実に失います。そして、再び信用を取り戻そうとしても簡単に取り戻せません。利益のためなら顧客を欺く企業というレッテルを貼られれば、それを払拭するのは容易ではありません。 非常識な行動をとるようになれば、企業業績の足元を見られます。「こんな手口を講じるようでは企業の先行きが危うい」と勘ぐられ、たとえキャンペーンを実施しても参加してもらえない結果を招きます。信用を失えばすべてが悪い方向へ進みます。すべては自らが招いたことであり、自業自得なのです。 ● オオカミと少年の結末を思い起こすべき イソップ童話に「オオカミと少年」という有名なお話があります。羊飼いの少年が「オオカミが来た」とうそを撒き散らして、村人が慌てる様子を笑っていました。少年はおもしろがって何度も繰り返していると、ある日オオカミが本当にやってきました。しかし、村人は少年を信用せず最後はオオカミに食べられてしまうという悲しい物語です。
「重要」と書いて人目を引こうとする広告配信は最初は効果があるかもしれません。しかし、いずれ誰からも相手にされなくなり、本当に重要な用件があって知らせようとしても誰も目を通してくれなくなります。企業が顧客から信用を失墜されたら事業は終わりです。自分たちがいかに浅はかな行動をしているのかを自覚できないようでは困ります。 ● 目先の利益に目がくらんでも得るものはなし 広告配信事業で収入を得ているIT企業では、年々収益が伸び悩んでいる背景もあり、打開策として常識を逸脱したなりふりかまわぬ宣伝行為が横行するようになりました。そのひとつが、「重要」と書いて広告メールを送りつける手段です。 目先の収益を得ようとするばかりに周りに目が行き届かなくなると、即効性のある姑息な手段を考えます。いみじくも最初は功を奏するかもしれません。しかし、長続きはせず、そのつけが必ず回ってきます。オオカミと少年の結末そのものです。一時の業績向上をもくろんでも結局は得るものより失うものの方が大きいだけです。 ● 常識を見失うべからず 利益のために常識を逸脱する行為は企業のイメージを損ない、顧客からの信頼や信用を自ら失うしっぺ返しを受けます。浅はかな行動に出る前に、事業の責任者は後先を踏まえた良識ある判断を忘れてほしくはありません。もし、上に立つ人が常識と非常識の分別がつかないとしたら部下の軽率な提案を戒める術がなくなるだけに大問題です。 常識を見失った行動が万が一うまくいってしまえば、味をしめてエスカレートしていきます。そうすれば歯止めがかからなくなり、気がつけば社会的制裁を受ける事態に発展するかもしれません。だからこそ、利己的な行動を優先して、常識を見失うことだけはあってはなりません。 ● 会員を大事にしよう 広告配信のような会員制のサービスを運営する企業にとって、登録会員は長い時間をかけて得た宝物です。その宝を自ら失う行為は、自ら財産を捨てるのと同じです。会員の心を逆なですることは決してしてはなりません。会員を大事にするのはサービスを営む上で最も大事な姿勢です。 ネットサービスでは、会員と対面する機会が少ないだけに、人を大切にする姿勢が薄れてしまうのかもしれません。IT企業は、たとえ相手が見えなくとも、会員の心を大事にしてほしいです。 ネットでも実生活でも人を欺く行為はとがめられてしかるべきです。「重要」と書いた広告配信するような軽はずみな行動がネットで公然化しないことを願います。
2013年8月8日発行 第349号
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