特集:有権者が気をつけたいインターネット選挙運動の注意点
ところが、インターネットでの選挙運動について詳しく知ろうと総務省のサイトにある関連資料を読んでも、役所独特の難解な文章に頭を悩ませます。結局どんな行為は許されるのか、あるいは禁止なのか明確にできず戸惑うばかりです。 今回の特集は、インターネットを通じた選挙運動を行うとき、有権者がしてよいことといけないことを整理してまとめました。 <有権者がインターネットで選挙運動できる手段>インターネットには、メールやブログ、twitter、SNSとさまざまな情報発信手段があります。有権者はネットでの選挙運動でどんなサービスや機能を使うことが認められているのか、まずそれから整理してみましょう。 ● 電子メールでの選挙運動 → × 有権者がネットで選挙運動をする際に一番心得ておきたいのが、電子メールを使った活動はできない点です。電子メールでの選挙運動は候補者と政党しかできません。くれぐれも有権者が支持者を応援するためのメールを送らないようにしてください。また、候補者や政党からのメールを転送したり、メーリングリストに送るのも同様に禁止です、 有権者は選挙関連のメールは受信だけに徹するようにしてください。 ● ブログやウェブサイトでの応援 → ○ 自分のホームページやブログで特定の候補者や政党を応援したり、投票を呼びかけることはできます。注意点としては、開設しているサイトやブログに連絡用のメールアドレスを明示する必要があります。 ● twitterやSNSでの活動 → ○ twitterやfacebookを使っての選挙運動もできます。もちろん、候補者の公式アカウントをフォローしたり、ファンになることもまったく問題ありません。 電子メールと異なり、候補者や政党からの投稿をリツイートしたり、いいね!をすることも認められています。 <ネットでの選挙運動で絶対やってはいけないこと>ネットで選挙運動をする際、具体的にどんな行為は絶対してはいけないのでしょうか。基本的には従来の選挙運動と共通するものがほとんどですが、ネット特有のものもあります。 ● ライバル候補への誹謗中傷 どんなことがあれ、他人を誹謗中傷する行為は厳禁です。同じ選挙区のライバル候補や、対抗する政党をおとしめるための言葉の暴力は許されません。一つ間違えれば名誉毀損に抵触します。また、「○○へ投票するのはやめましょう」と、特定の候補者への投票を妨げる行為は公職選挙法の投票妨害に抵触するためくれぐれもしないようにしてください。 ● 根拠のないデマの流布 対抗勢力を当選させないよう、根拠のない作り話やデマを流す行為はしてはなりません。報復とばかりに対抗勢力同士でデマの応酬が繰り広げられれば見苦しいだけです。泥沼化すれば収拾がつかなくなります。 ● なりすまし行為 候補者に限らず他人になりすましてネット上で振る舞う行為は厳禁です。発覚した場合、厳罰になる場合があります。作為的な行為はあっけなくばれることが多いので、軽はずみなまねはしないよう自覚意識をもってください。 ● 18才未満の選挙運動 ネットでも街頭でも、18才未満が選挙活動を行うのは公職選挙法で禁止されています(2016年6月19日から選挙権が18才以上に引き上げられました)。選挙権をもたない18才未満の学生は十分気をつけてください。選挙ボランティアに参加する際は、面接時に年齢確認を受けます。 高校三年生の選挙活動の注意点は次の記事にまとめてあります。 ● ネット上にある政党や候補者の情報を印刷して配布 ネットに掲載された政党や候補者のホームページやブログ、あるいはメールの内容を印刷して配布することはできません。実家の両親に見せてあげようと無意識にやってしまいがちですが、認められていない行為ですので気をつけてください。 ● ネットでの選挙運動は選挙期間中のみ ネットでの選挙運動は該当する選挙の公示…告示日から投票日の前日までです。ネット選挙解禁とばかりに、公示前から意気込んで活動してはいけません。また、投票日当日の活動も禁止ですので要注意です。 「今日は投票日です。投票所に行って○○党に一票を」といった投稿はしないようにしてください。 <ネット上で選挙運動する際の注意>ここからは法律上の問題ではなく、道義上、あるいは社会通念上気をつけてほしい事柄をまとめます。 ● 支持者や支持政党の投稿をやみくもにリツイートしない twitterで自分が支持する候補者や政党の投稿をやみくもにリツイートするのは控えましょう。フォロワーにとっては無用なリツイートとしか受け取ってくれず甚だ迷惑です。ひいきの候補者や政党のイメージを悪くさせるばかりか、せっかくのフォロワーを失う結果にもつながります。 フォロワーに望まれない自己満足の選挙宣伝は慎みましょう。 ● 支持者のSNS投稿をやみくもに「いいね!」を押して宣伝 twitter同様、facebookでも候補者や政党からの投稿に「いいね!」を押して友人へやみくもに知らせると煙たがれます。登録している友人からすれば望んでもいない選挙宣伝を押しつけられているようなものです。安直な「いいね!」の乱発が実生活の友人を失うきっかけにもなりかねません。 SNSでの選挙運動も度が過ぎれば迷惑行為です。この点を十分わきまえてください。 ● 拡散希望と書いたツイート twitterで「拡散希望」と書いて、フォロワーに自分の投稿を広めさせる行為は利己的な迷惑行為でしかありません。 拡散希望と書いた選挙運動は応援ではなく、迷惑メールのスパムと同じです。広まればよいという自分本位の選挙宣伝は支持政党や候補者へのマイナスイメージをもたらすだけの逆効果でしかありません。くれぐれも拡散希望と明記した選挙運動はしないようにしてください。 ● 他人のブログや掲示板に特定の候補者や政党へ投票を呼びかける書き込み 他人が開設しているブログや掲示板に、支持する候補者や政党に投票を呼びかける書き込みをところ構わずすれば迷惑千万です。人の迷惑を顧みない行為は誰の得にもなりません。宣伝になるなら何でもしようと罪悪感を忘れた利己的な考えに陥らないよう自覚意識をおってください。● ライバル候補の言葉のあげつらいや揚げ足取り ネットの選挙運動で最も見苦しくなるのが、ライバルの候補者の言動を一語一句あげつらい、言葉尻を捕まえて揚げ足を取る行為です。ライバルのtwitterやSNSでここぞという発言を見つけて言葉狩りの投稿をすれば、受け取った側はうんざりします。これを互いの勢力同士で繰り広げればもはや目も当てられません。フォロワーや友人の中には自分と同じ政治家を支持する人もいればそうでない人もいます。両者の見苦しい投稿を見せつけられるのは苦痛でしかありません。 ● 口汚い言葉を書き連ねた非難 ネットでは人前で言えないような口汚い言葉を並べることが平然とできてしまいがちです。こうした罵詈雑言をブログやSNSで投稿すれば品格を疑われます。エスカレートすれば歯止めのかからない悪辣な言動に終始し、選挙運動の本質から逸脱します。 候補者を目の前にして言えないような言動は自制する良心をもってネットの選挙運動に取り組んでください。 <ネットの選挙情報に依存しないこと>ネット選挙が解禁されれば候補者と有権者による有意義な意見交換が実現でき、結果として投票率の上昇につながると幻想を抱きがちです。しかし、実際はかなりの混乱を招くと予想されます。 たとえば、ネットに不慣れな候補者がネットマナーに反した行為をしたり、うかつな失言をすれば、それを見逃すまいとまたたく間に広めては非難を浴びせる光景が至るところで起きるでしょう。 また、候補者の知らないところで根拠のない歪んだ情報が流れたり、情報がねじ曲げられて不本意なデマがな氾濫することも考えられます。 ネットでの選挙運動が解禁されても、当面は混乱の連続となるでしょう。ネットでの選挙運動に過度に期待するのは禁物です。有権者は、ネットの情報に依存しないよう心がけ、公開討論や街頭演説、マニュフェストを加味しながら総合的に判断するのが最善です。
2013年6月13日発行 第347号
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