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コラム:"否定しない"より"一理あり"

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 とあるイベントのとき、興味があり意見を盛り込んだ質問をしました。すると壇上の回答者から「あなたの意見は否定しない。」と頭ごなしに言われ、いささか傲慢な態度を突きつけられた思いでした。別に横柄な主張をしたのではないだけに、初対面の人に向かってその物言いはないだろうと腹も立ちました。

 私は、議論や意見交換の際に「否定はしない」という言い方は慎むべきと考えます。

● 否定はしないけど肯定もしない

 唐突に「否定はしない」と主張するのは、必ずしも肯定しているわけではないという態度を暗示してしまいます。もし肯定的な態度を示すならば、同感や支持といった相手と共感する言葉が自然と出ます。

 さらに「否定はしない」とは、積極的に肯定もしないし認める気もない意思を相手に突きつけてしまいます。慢心な気持ちを表して含みをもたせれば語弊のある意味合いをもちます。

 否定という言葉が出るときほど好意的ではない意思の表れを露呈するだけに、言われた側は腑に落ちない気分を抱きます。特に初対面の人に対しては以心伝心が通じていないだけに気をつけるべきです。

● おごりやうぬぼれの表れ

 否定しないと無意識に出るときは、本人も気がつきにくいおごりやうぬぼれが内心のどこかにあります。

 的を射た意見を述べられ、それを認めたくないときや、相手の意見を認めれば自分の思想を否定されてしまうなど、個人的に気に入らない不都合があるときほど傲慢な態度が自然と出てしまいます。すると、自分の経歴や実績を鼻にかけて相手を格下と捉え、おごりやうぬぼれを込めて相手を蔑む言葉を探してしまいます。そのとき脳裏に思う浮かぶのが「否定しない」という一言です。

 相手に心の裏を暗示させてしまうのが「否定しない」という返答です。なかなか気がつきにくい言葉の綾です。

● 否定しないより一理あり

 「否定しない」と頭ごなしに言うのは、相手に好意的な印象を与えず、逆に距離感をもたらしかねません。議論をしたり意見交換をするときには「上から目線」のような相手を見下げた態度として受け取られる場合もあります。

 人と気持ちよくコミュニケーションをすすめていく際は、言葉の工夫も大切です。私は、「否定しない」の代わりにこの一言が適切ではないかと考えます。

    「一理あります。」

 根拠も明示せず否定しないと言うのは語弊がありますが、「一理ある」は意見そのものは認めている意思を伝えられます。そして、相手への敬意とその意見を尊重する表れも込められています。

 メーリングリストなど顔の見えない文字だけのコミュニケーションであれば、言葉の工夫はより重要です。些細な一言がぎくしゃくしたやりとりにつながればお互い気持ちが良くありません。議論や意見を主張しあう際は「否定しない」よりも「一理ある」と言う方が有意義なコミュニケーションの潤滑剤となってくれるでしょう。


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2013年5月13日発行 第346号

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