教えて先輩:無料通話アプリは個人情報が漏れるというのは本当なの?その一方で、無料通話アプリは個人情報が垂れ流しになると頭ごなしに否定した触れ込みが絶えず聞こえてきます。これから無料通話プリを利用しようとする人にとって果たしてこれは本当なのか検討がつきません。 無料通話アプリは、仕組みを理解して設定をきちんとすれば安全に使える便利なツールです。今回は、なぜ無料通話アプリの仕組みを解説しながら個人情報が漏れるという誤解を解き、安心して使うための設定方法を取りあげます。 <無料通話アプリとは>無料通話アプリとは、スマートフォンを使って友達とチャットのようなメッセージのやり取り(トーク)をしたり、インターネットを使った音声通話が楽しめるツールです。代表的なサービスとしてLINEをはじめ、commやカカオトークがあり、利用者獲得にしのぎを削っています。 インターネット通話には、これまでSkypeのようなメッセンジャーソフトがありました。こうした従来のサービスと比べ、無料通話アプリは使い方の仕組みに大きな違いがあります。特に、友人登録の方法がまったく異なります。 <無料通話アプリの仕組み>無料通話アプリは、スマートフォンに記録されている住所録のデータを参照し、同じサービスを利用している人を探し出して自動的に登録します。住所録にない人を登録するときは、直接会って追加手続きをするか、公開用のIDを設定してそれを相手に伝えて登録します。 無料通話アプリは、面倒な友人登録作業をしなくてもよい気軽さがある反面、サービスの仕組みがわかりにくく、特に個人情報がアプリやサービス内で機械的に処理されていることに気がつきにくい二面性を持っています。 個人情報の取り扱いで誤解を招きやすいの次の点です。 ● アドレス帳のデータは運営会社のサーバーに転送される 友達が同じサービスを使っているかを探し出すために、アプリは自分のスマートフォン内に記録されているアドレス帳のデータを運営会社のサーバーへ転送します。住所録のデータを追加すれば無料通話アプリを起動したときに更新内容も送られます。 アプリが自動転送したアドレス帳のデータはサーバー内のプログラム上で処理されるだけです。誰かに見られたり外部には流出しません。 アプリの初期設定では、自動的にアドレス帳のデータを転送するよう指定してあります。そのため、了解なしに個人情報が盗み出されたと勘違いしてしまうのです。 後述しますが、アドレス帳のデータ転送は事前に行わないようにアプリ側で設定できます。 ● アプリが自動的に友人登録をする サーバーに転送されたアドレス帳のデータは、他の利用者から入手したアドレス帳のデータとサーバー内で機械的に照合しながら、自分のアドレス帳の中に同じサービスを利用している人がいるかを調べます。該当する人がいたときはその人を自動的に友人登録します。 照合作業はプログラムで処理しています。個人情報を利用者の手の届かないところに持ち出して悪用しているのではありません。 自動的に友人登録する機能も、アプリ側で許可しないように設定できます。 ● 初期設定では友人登録が自動的に行われる これまで挙げた機能は、アプリの個人管理設定で制限できます。しかし、初めてアプリを起動したときの設問ではすべての機能を使えることを前提に作業が進みます。そのため、機能やしくみを理解できていない人は、画面の指示通りに設定をしてしまいます。その結果、使っていくうちに無防備な設定に気がつくと、同意なしに個人情報を持ち出されたと誤解を抱いてしまうのです。 無料通話アプリから個人情報が外部に漏れるという誤解は、サービスを提供している側が運営方針やしくみがきちんと利用者に伝えていないところにも原因があります。運営会社は、はじめて利用する人向けにわかりやすいしくみの説明と、安全性を優先した初期設定の配慮を望みたいです。 <安全に使うためには>はじめて無料通話アプリを使うときは、公開や登録範囲を限定しておくのが安全です。慣れるまではアプリのアカウント管理やプライバシー設定にある次の項目をオフにしておくことをおすすめします。 ● 最初はアドレス帳の友人を自動追加しない これは影響はないのですが、しくみがわかるまではアドレス帳の友人を登録するのは自動ではなく手動で行うのをおすすめします。自動処理の心理的な不安を和らげます。 ● 相手のアドレス帳からの自動登録を受け付けない 自分の住所や電話番号を知っている人は、自動的に自分を友人登録できる設定があります。自分の個人情報を知っているのは身近な人だけとは限りませんので、オフにしておくのがよいです。 ● 自分のアドレス帳に記載していない人からの登録は拒否 アドレス帳に記載していない人が自分を友人として登録できる設定があります。これも、誰に登録されてしまうのかわからないためオフにしておきます。 ● ID検索は必要なときだけ一時的に許可する 相手から自分を検索してもらうための方法として固有のIDを設定する方法があります。IDは常に公開しておくよりも、誰かに登録してもらう際に伝えて短時間だけ公開しておくのがよいです。人づてでIDが知れ渡っていくと、望まない人にまで自分が利用していることがわかってしまいます。IDはいくらでも変更できますので、時折変えておくのもよいでしょう。 ● 携帯電話番号からの検索を許可しない 無料通話アプリの中には、携帯電話番号を入力すると持ち主が同じサービスを利用しているかを探し出すことができます。知り合いを見つけるには便利ですが、何らかの手段で自分の携帯電話の番号を入手した人がこの機能を利用すると、通話をかけてきたり望まないメッセージを送りつけることができてしまいます。 第三者が携帯電話番号で検索できるのはやはり心配です。最初はオフにしておき、知り合いを登録する際にだけオンにするのがよいです。登録が済んだら再びオフに戻すのを忘れないようにしてください。 ● 公開設定がある場合は許可をしない 自分を検索できる機能のあるアプリの場合は、公開設定をオフにしておきます。登録作業で必要なときに短時間だけ公開にするのが最適です。 実際にアプリを利用する際は次の点にも注意してください。 ● はじめのうちは身近な友人だけを登録する 無料通話アプリは身内とのやりとりで使うことが多いです。まずは実生活の友人同士の連絡や通話に使うのがよいでしょう。ネットで知り合った人の登録は慣れてきてから行い、信頼できる人だけに限定します。 ● 登録は直接顔をあわせて行う 友人登録はできるだけ直接相手と会って、お互い同意の上で登録する方が安心です。その際、QRコードや互いのスマートフォンを振り合うことで登録できる機能を使うと便利です。 ● 面識のない人からの登録依頼は絶対に許可しない 無料通話アプリの友人登録は、言い換えれば電話番号を教えあうのと同じです。見ず知らずの人に電話番号やメールアドレスを教えないのと同様、友人登録の依頼があっても安易に受け付けないようにしましょう。 ● 不審な人や執拗な人はブロックをかける 無料通話アプリでは、特定の人を一度友人リストに追加すると削除することができません。代わりに相手を受け付けないブロックという方法で拒絶します。登録者の中に不審な人やしつこくつきまってくる人がいればブロックをかけて自衛するようにしてください。 ● 出会い目的やプレゼントの誘いに乗らない 最近は無料アプリを通じた出会い目的の勧誘を掲示板に書き込むケースが増えています。トラブルに巻き込まれないためにもこうした誘いに乗らないように気をつけてください。 また、無料プレゼントとうたって無料通話アプリで使用しているIDを聞き出す詐欺も横行しています。個人情報収集目当てに行っている場合があるため、不用意に応募してIDを教えないよう気をつけてください。 ● 不用意に街頭アンケートに答えない 個人情報の扱いが明確でない街頭アンケートには安易に回答しないのも大切です。 回答欄に記入した個人情報が流れて、何者かが携帯電話の番号や住所・氏名を自分のスマートフォンのアドレス帳に登録すれば、無料通話アプリで自分を探し出されてしまう危険性があります。公開設定をオフにすれば防げますが、自分自身でも日常生活で個人情報の取り扱いは慎重に行うようにしてください。 <一部のデマに振り回されないで>無料通話アプリのサービスを運営しているのは日本だけでなく海外の企業が勢力的に展開しています。とりわけ韓国企業の成長が著しく、代表的なのがLINEを運営するNHNです。(日本でのLINEは子会社のNHN Japanが運営しており、今後LINE株式会社に分社化して事業を引き継ぎます。) 昨今の日韓関係の悪化もあり、韓国を個人的または思想的に嫌う人の中には、韓国が運営する無料通話サービスを目の敵にしています。頻繁にネット上で見かけるのが、韓国の無料通話サービスは個人情報を盗み取って悪用しているという中傷的なデマです。こうしたデマはずいぶん前から見かけますが、運営側からアドレス帳の個人情報が外部に流出した事実はありません。もし、本当に個人情報を悪用しているのであればすぐさま発覚し、またたくまに社会的信用を失い、廃業に追い込まれています。 はじめて無料通話アプリを利用する人にとっては、不安を煽るような触れ込みを見ると疑心暗鬼に陥ります。そのときは自分自身でサービスの仕組みを理解することからはじめるのが先決です。アプリを起動するとアドレス帳のデータがどのようにサービス内で利用されるのか、そしてどのようにすれば安全に使えるのかを自分自身で把握することを強くすすめます。 <まとめ>無料通話アプリが誤解を受けている点をまとめると次の通りです。
しくみさえわかれば無料通話アプリから個人情報が漏れるという不安や誤解は解消できます。利用する前に運営会社の公式サイトを見てサービス内容を確認してからアプリをダウンロードするのが賢明です。
2013年2月17日発行 第343号
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