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教えて先輩:世界初のコンピューターウイルスと作者は?

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 コンピューターウイルスの脅威は日に日に増すばかりです。新聞やテレビでも、作業用のパソコンにウイルスが侵入してウェブサイトの内容を勝手に改ざんしたり、官公庁のパソコンにウイルスが感染して重要な情報が盗み出された可能性があるといったニュースが相次いで報じられています。

 ところで、コンピューターウイルスはいつごろ誰が初めて作ったのでしょうか。興味があったので調べてみました。

● 世界初の有力候補はアルビ兄弟が開発したBrain

 コンピューターウイルスとは、利用者に気づかれずにソフトウェアやコンピュータシステムに紛れ込み(感染)、不正な動作を引き起こし(発症)、自らの複製を作ってUSBメモリや電子メールを介して広まっていく(伝染)プログラムです。

 コンピューターウイルスは古くから存在します。中でも、次のプログラムが世界初と呼ばれています。

  • Creeper 1970年代
    ARPANETという、現在のインターネットの前身にあたるコンピュータネットワーク上で確認。

  • Elk Cloner 1982年
    Richard Skrenta(当時は高校生)が開発。Apple II(アップルのMacintoshの先代に当たるパソコン)で発症。

  • Brain 1986年
    パキスタン人のアルビ兄弟が開発。IBM-PC(現在のWindowsパソコンの先代)で発症。

 これらの中で、アルビ兄弟が開発したBrainが世界初のコンピュータウイルスとして知れ渡っています。このBrainは他のウイルスと比べて感染規模が大きく、10万件以上にも及んだと言われています。この感染規模と認知度が世界初の有力候補につながっていると考えられます。

 Brainは現在のコンピューターウイルスのように、意図的な被害をもたらすためではなく、自社で開発したソフトが不正コピーされたときに警告を促すために作られました。当時のソフトはフロッピーディスクに記録して販売していました。ソフトを勝手にコピーして使用するのも容易だったため、不正コピー対策に頭を悩ませていました。

 アルビ兄弟は、自社ソフトを配布する際、正規の製品ディスクから別のフロッピーディスクにソフトをコピーすると、自動的に複製先のフロッピーディスク内部に特殊な書き換えをするプログラムを仕込ませました。そして不正コピーしたフロッピーを使ってソフトを起動すると、画面に不正コピーである警告を表示する仕掛けを施したのです。不正コピーしたフロッピーディスクを使って同様にコピーを行えば、コピー先のソフトでも同じ警告が表示されました。つまり、不正コピーされればされるほど警告メッセージ入りのソフトが広まっていったのです。

 Brainは悪意の目的ではなく、自社の権利を主張する善良な目的で作られました。発症といっても単に警告メッセージを表示するだけで、コンピュータやファイルには害を与えませんでした。それにもかかわらず、結果として不正コピーの横行によって広くその名が知れ渡り、のちに世界初のコンピューターウイルスとして認知されたのはなんとも皮肉な話です。

 なお、BrainとElk Clonerのどちらが世界初のコンピューターウイルスであるかは、両者それぞれに説があります。論争になるほどのものではありませんが、参考として紹介します。

● 国内でコンピューターウイルスを作成すれば犯罪

 20世紀後半のコンピュータ草創期と違い、21世紀の今日ではコンピューターウイルスはおとがめなしでは済まされず、犯罪として厳しく扱われる時代になりました。

 日本では刑法が改正されて、2011年7月からは故意にコンピューターウイルスを作成・提供すると犯罪として扱われるようになりました。不正指令電磁的記録に関する罪、いわゆるウイルス作成罪です。この法律に違反してコンピュータウイルスの作成や提供をすると3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。また、ウイルスを取得したり保存した場合でも2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

 ウイルス作成罪について詳しくは法務省のサイバー刑法に関するQ&Aをご覧ください。

 すでにウイルス作成罪を適用した摘発も行われています。

● パソコンやスマートフォンにはウイルス対策を

 最近のコンピューターウイルスは手口が巧妙で、感染するとシステムやデータを改ざんしたり、内部の個人情報を別のサーバーに送出させて収集するなど悪質化しています。

 ふだん使用しているパソコンには必ずセキュリティソフトを導入し、常に最新のウイルス定義ファイルを取得して万全の対策を講じるのが肝要です。最近では無料のウイルス対策ソフトもあり、検知能力も高い評価を受けています。セキュリティソフトに予算を回せないときは検討するとよいでしょう。

 パソコンのみならず、流行のスマートフォンにもウイルスの脅威が見え始めています。スマートフォンを購入した際はあわせてスマートフォン独自のセキュリティ対策を講じるようにしてください。


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2012年7月25日発行 第336号

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