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特集:やらせ投稿を見抜くための情報分析学

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 食べログヤフー知恵袋などの口コミサイトに、やらせの投稿を依頼して店の評判を高める行為が取りざたされ、大きな波紋を呼んでいます。その影響で、口コミサイトを利用する人がどの情報を信用してよいのか疑心暗鬼に陥り、頭が混乱する不安感にさいなまれています。

 情報は冷静に分析していけば、その真偽を見抜きやすくなります。今回は、私の経験を元に口コミやレビュー記事を評価する際のちょっとした分析テクニックを紹介します。

<表面化するステルスマーケティングの存在>

 口コミサイトで、売り手の広報担当者や広報を委託された事業者が消費者や利用者になりすまして、やらせやサクラの書き込みをする宣伝行為をステルスマーケティング、略してステマと呼ばれています。ステマは、消費者の購入判断を惑わす元凶となっています。

 とはいえ、ステマを目的とした書き込みは、労力や作業効率の面で単純で平凡なパターンになりやすく、慣れてくるとある程度見抜けるようになります。そこで、情報の整理をしながら目的にあった口コミだけを拾い出していくところから始めるのがよいです。

<情報の整理をする>

● おおげさな表現を用いた投稿は一切無視

 タイトルにおおげさな言い方をしているものは、見え見えのわざとらしさをさらけ出しているに過ぎません。たとえば、次のような見出しです。

  • ヒット間違いなし!
  • さすが評判の社長のお店
  • これぞ時代の最先端
  • もう手放せない逸品
  • 毎日食べないと気が済まない

 見出しで人を引きつけようとするタイトルの付け方をメディア用語で「釣り」と言います。作為的なやらせをするときは、釣り文句で人に関心を持たせようとします。タイトルに過剰な表現を用いている投稿はコメントの内容も疑わしいです。

● 受け売り文句を並べたものは信憑性がない

 CMやホームページに掲載されているキャッチコピーや説明文をかいつまんだだけの投稿は、実際に試したかどうかの信憑性がありません。売り文句だけを機械的に並べていれば、作為的な投稿の典型です。お店や商品のホームページをあらかじめ訪問して内容説明を読んでから口コミを読むと、怪しい投稿を洗い出せます。

● 抽象的な感想や感嘆だけの書き込みは切り捨てる

 漠然と感嘆表現だけしか書いていない内容は説得力がありません。抽象的な内容だけが大量に投稿されている口コミは同一人物が意図的に自作自演して書き込んでいる可能性もあります。

  • おいしすぎ!
  • 最高
  • 神アプリ

 このような内容しか読み取れない投稿は評価の対象から外すのが賢明です。

● 具体的な事例のある内容だけに絞る

 「おいしい」、「すごい」など漠然とした内容では何が優れているのか伝わってきません。実際に食べたり使ったりしたときの具体的な感想が盛り込まれていない口コミであれば情報に価値がありません。根拠や実感性のある具体的な書き込みこそが読み手が求める口コミです。たとえば、次の点を意識して書き込みを読むと内容を吟味できます。

  • 食べ物であれば、具体的な食感や印象を具体的に表現しているか。
  • 製品であれば、どのようなときに使用してその結果どんな効果があったか。
  • 専門的な道具であれば、メリットやデメリットといった事例があるか。

 やらせの書き込みは詳細な具体例を盛り込むだけの調査をしていません。それだけに、説得力の乏しい薄っぺらい内容になりがちです。そして、口コミの質より量で情報操作をしてきます。読み手は、量より質を重視して内容を判断していくのが大切です。

<自分が求めている情報を拾い出そう>

 口コミを求める本質的な目的は、自分と共通する嗜好や意義をもっている人からの情報を得ることです。まずは、自分がほしい具体的な情報は何であるかをを整理してみましょう。次のように、自分と共通点を持つ情報だけを拾い出します。

  • 味や食感が自分が求めているものかどうか
  • 店の雰囲気が自分の趣向と合致しているか
  • 自分の用途と同じ活用事例があるか
  • 製品評価が自分の技量と同じくらいの人であるか

 口コミは、うわべだけの評価を鵜呑みにしても、自分の目的に見合った情報でなければ意味がありません。やらせに振り回されないためにも、情報の取捨選択はとても重要です。

<絶賛した投稿だけが上位表示されていれば作為的>

 口コミやレビューの表示には、利用者が参考になった投稿内容にポイントをつけられる機能があり、ポイントが高い口コミほど上位に表示されます。この機能を悪用すると、高評価の口コミ投稿を上位に表示し、批判を書いた投稿は意図的に表示順位を落とすことができます。

 もし、自分が求めている商品や店の口コミ投稿で高評価のものが上位で批判的なものが下位に明確に別れているとしたら組織的な順位工作をしている可能性が高いです。評価ポイントは個人単位で順位を動かすのは困難です。組織的に数で力任せに行わなければなりません。

 口コミは先頭から一部だけの書き込みだけを見るのではなく、なるべく下位まで目を通して分布を調べるとやらせ操作が行われているか判断できます。

<投稿者のアカウントの命名もチェック>

 投稿者のアカウントも調べてみると、やらせかどうかを判断できます。もし、機械的な文字の羅列や愛着のない命名をしたアカウントであれば、いつでも破棄できる「捨てアカ」の可能性が高いです。このようなアカウントでの投稿は内容に責任がない場合が多いです。投稿内容だけでなく、アカウントもいっしょに見ておくとよいでしょう。

<自分自身での総合評価が重要>

 口コミにしても評価記事にしても、最終的には自分自身で総合評価をしなければ、うわべのうたい文句に振り回されるだけです。その際に抑えておきたいポイントは次の通りです。

● 長所と短所を必ず確認する

 自分の都合のよい情報だけを拾っても、いざ自分が手にしたり体験したときに期待通りの結果が得られません。長所・短所をしっかり抑えておきましょう。

● なるべく書き込みを一通り閲覧する

 たくさんの口コミがあった場合は仕方ありませんが、最初の数件だけで評価せず、なるべく古い情報も閲覧して全体的な評価を参考にしましょう。前述の通り、抽象的な内容は外してかまいません。

● 別のサイトの情報も参照する

 特定の口コミサイトだけに頼ると、評価内容が偏る場合があります。他の情報も参照するなどして共通点を見つけると、内容の信憑性が高まります。

<やらせに振り回されない五ヵ条>

 やらせ情報に振り回されないポイントをまとめると次の通りです。

  1. 大げさな表現やカタログなどのうたい文句を並べただけの内容は切り捨てる。
  2. 具体的な事例を盛り込んだ情報を拾い出し、自分の目的と照らし合わせる。
  3. 上位によい評価が表示され、悪い評価が下に分かれているときは作為的な操作の可能性あり。
  4. 投稿者のアカウントもチェックして、ステアカであるか確認する。
  5. 総合評価を忘れずに。

 情報分析はすぐに身につく技能ではありません。最初のうちは内容を鵜呑みにしてだまされてしまうことはたびたびあります。少しずつ経験を積んでいくと、懐疑的な内容を見抜ける力がついてきます。最近はやらせだけではなく、デマや扇動的な情報も氾濫しています。何を信じてよいかわからないと頭を抱えるよりも、冷静に情報を読み取っていくスキルを身につける方が建設的です。この機会に、情報を見抜く力を体得してみてはいかがでしょうか。


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