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よもやま話:現代物理学とインターネットの意外な関係

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 2011年は、光よりも速い物質が存在するかもしれない実験結果や、物質の質量の起源となる粒子のの発見に大きく近づいたなど、現代物理学の根底からの議論に大きく寄与する成果が発表されました。その発表元となっているのが、CERNというスイスとフランスにまたがる研究施設です。

 実はCERNは物理学以外にインターネットの発展においても大きな貢献をしているのです。古くからインターネットを扱っている人なら「あのことか」と想像がつきますが、CERNとインターネットのトリビアな関係について取りあげます。

● CERNって何をしている組織?

 CERNは、フランス語でConseil Europeen pour la Recherche Nucleaireの略で、セルンまたはサーンと呼ばれています。日本語では欧州原子核研究機構と表記しています。CERNは世界有数の素粒子物理学の研究所で、スイスのジュネーブ郊外とフランスの国境地帯にかけて大規模な実験設備をかまえています。

 物質の成り立ちや宇宙創世の起源を知るには、素粒子と呼ばれる原子を構成している要素を調べる特殊な実験が欠かせません。その実験設備として直径が何十キロメートルにも及ぶ円形の粒子加速器という巨大な施設が必要です。そのため、とても民間レベルではできる事業ではなく、国家規模のプロジェクトとして各国が協力しながら研究を進めています。その拠点となっているのがCERNです。

 CERNはヨーロッパ諸国が中心となって活動していますが、日本からも国立大学や研究機関に所属する研究者らが参加しています。

● CERNはウェブの基本的なしくみを考案した発祥の地

 研究機関で従事する人にとって、論文や文献などの学術情報を効率的に収集、参照、さらには共有するのはとても重要です。1990年、CERNに在籍していた技術者ティム・バーナーズ・リーが、クリックして世界中に分散している数々のテキスト情報をリンクして参照できる現在のウェブページの仕組みや書式を考案しました。これが後に、World Wide Web、略してWWWという名称で広まっていきました。

 ブラウザを使ってインターネットで調べ物や買い物などをするための基本的なしくみは、実は学術情報の共有を目的に作られ、発祥の地は現代物理学の研究機関だったのです。

 ちなみに、CERNに設置された世界初のウェブサーバーは、かの有名なスティーブジョブズが作ったコンピュータでした。スティーブジョブズが、当時のアップルコンピュータ社を追われたた後、新たに設立した会社で開発した製品でした。NEXTSTEPという名称で市場に出たものの、あまり普及しませんでした。

 当時のウェブサーバーや日本のWWWの歴史を紹介したサイトがありますので、ぜひご覧ください。

● CERNで考案された技術はウェブサイトやブラウザの登場のきっかけに

 CERNで考案された初期のしくみでは画像を扱うことができませんでした。現在のウェブサイトのような画像も利用できるソフトは、1992年にアメリカのイリノイ大学の研究所(NCSA)で開発されました。Mosaicという名付けられたこのソフトは、ブラウザの元祖に相当するものでした。Mosaicをきっかけに、Netscape、Internet Exploerなど代表的なブラウザが登場し、現在ではSafari, Firefox, Google Chromeなど高速なブラウザが次々と産声を上げていきました。

 このように、現代物理学とインターネットの発展は情報という共通点で結びついていたのです。なお、CERNは見学ツアーも実施しています。スイスやフランスへの自由旅行のひとつとして訪れてみるのもよいかもしれません。かなりマニアックなヨーロッパ旅行となるのは間違いありません。

 自由旅行には以下の海外トラベルサイトが役に立ちます。


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2011年12月31日発行 第329号

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