コラム:なりふりかまわぬネットでの選挙運動に疑問追記:平成25年7月の参議院選挙から、インターネットでの選挙運動が解禁されました。現在ではインターネットでの選挙運動は認められています。 また、掲示板やコミュニティサイトでは政治活動とは無縁の場に一方的な政治思想を書き込んだり、自分とは支持政党の異なる相手を罵倒する光景を見かけます。このような状況で、ネットでの選挙運動を果たして今後解禁してよいものかとても疑問に感じます。今回はネットで見かけたあまりにも傍若無人な選挙運動について書き綴っていきます。なお、あらかじめお断りしておきますが今回の内容は私個人の支持政党や特定の候補者に肩入れするような意図は一切盛り込んでおりません。くれぐれも誤解なきようお願いします。● 人目につくところなら場をわきまえない一方的な政治宣伝 ひときわ目に余るのは、政治とは全く無関係の場に、突然政治の話を持ち込む書き込みです。たとえば、料理の話題で盛り上がっている掲示板でいきなり、「そんな料理を工夫しなければならないのは○○党の政策のせいだ。そんな政党の言うことなど聞いていたら日本は終わりだ」、「××党が政権を取ればもうそのような料理すら口にできないほど日本はだめになる。」と吐き捨てては持論を長々と垂れ流すといった振る舞いです。言い換えればいきなり他人の家に上がり込んで、望みもしない演説を始めるのと同じです。まさに迷惑以外の何物でもありません。非常識という自覚意識がないのか疑問です。非礼さを忘れた自覚なき行動に恥を知らないようでは唖然を通り越して憤りを感じます。 ● 相手をののしる自制なき言葉の暴力 ヤフーニュースのコメントや個人のブログなどで見かけるのが、最初から相手の意見をふまえて自分の言い分を主張する姿勢はまったくなく、自分と異なる支持者を見つけた途端、罵詈雑言を浴びせては相手の言い分を打ち負かす光景です。あげくには「マスコミの情報操作にだまされるな。俺の話だけを聞いていればいいんだ」など、むちゃくちゃな理屈を押し通す光景も見かけます。このような応酬が繰り返されればインターネットは言葉の暴力がまかり通る無秩序な世界に変貌しかねません。自制と良識を忘れた言い争いほど見苦しいものはないのです。 ● 国政を担う政党が公職選挙法を遵守できなくてよいのか? 冒頭でも書きましたが、今回の選挙では公職選挙法をないがしろにして政党がネット上で選挙運動を繰り広げています。今後の政権を担おうとする政党がこのような行動を平然とするのは許されるでしょうか。 前述の掲示板などへの一方的な書き込みは当初、特定政党への熱烈な支持者によるものと思っていました。政党は公職選挙法に神経質なだけにネットでの選挙運動には細心の注意を払っていると考えていました。ところが現状をふまえるともしや掲示板への書き込みは背景に政党主導による扇動行為なのではないかと疑念をもつようになります。 国会議員は法案を審議し可決するのが仕事です。それだけに、法律に基づいて行動するのは基本です。その規範とならなければいけない候補者や政党が現行の法律を無視したり一方的な解釈をして行使すれば法治国家そのもののあり方が崩れていくだけです。何をやっても天下御免を国政選挙でまかり通す現状を憂うのは私だけでしょうか。 ● 公職選挙法を改正してネットでの運動を緩和してよいのだろうか? アメリカではインターネットを使った選挙運動が活発で、日本でも公職選挙法を改正してネットでも幅広い運動ができるよう緩和する声が高まっています。しかし、日本人は欧米と異なり対面してのディベートや議論、意見交換といった自己主張の訓練や経験をしていません。そのため、日本に欧米の実状をそのまま持ち込んで解禁しても、インターネットが無秩序な政治思想や感情任せの水掛け論争、あるいはスパムのような非常識な宣伝活動の道具になるのではと心配です。さらには、言葉の暴力ともいえる反対支持派への誹謗中傷合戦を増長してしまうのではないかと危惧します。法律を扱う立候補者や政党が現行法をないがしろにした選挙活動をすでに繰り広げ、「やったもの勝ち」のありさまは公職選挙法の改正をする以前に問題視されてしかるべきです。このような現状をふまえると、私はネットでの選挙活動を緩和するのは時期尚早と考えます。 今回の衆議院選挙におけるネットでのなりふり構わぬ選挙運動や開示版の書き込みの実状を憂うのは私だけでしょうか?このような現状をふまえて将来、公職選挙法を改正してネットでの選挙運動を促進することに疑問を持つのは私だけでしょうか。
2009年8月30日発行 第299号
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