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よもやま話:相次ぐコミュニティサイト廃業と事業運営の明暗

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 今年に入り、SNSを基本としたコミュニティサイトが相次いでサービスの停止や事業撤退あるいは廃業に追い込まれています。主なサイトは次の通りです。
    カフェスタ
    このゆびとまれ
    まぐネット
 特にmixiの成功を機に注目を浴び続けてきたSNSサイトが、ここにきて人気にかげりを見せ始めてきています。事業運営次第で存続が危ぶまれる昨今のコミュニティサイトの明暗について取りあげます。

● ウェブベースのコミュニティサイトの短所が仇に

 SNSに代表されるウェブを使ったコミュニティサイトはアバターやスキンなど高機能のシステムを提供できる反面、利用者にとっては使いこなすのが大変です。また、日記や身の回りの出来事を継続的に書き綴るのは意欲があるうちは楽しいですが、三日坊主になりがちでしだいに疲れてきます。また、ウェブベースのサイトは利用するたびにそのサイトに自らアクセスしなければならず、興味が薄れていくとアクセスも減り、知り合った仲間とも音信が途絶えていきます。それだけに、利用者が「飽きやすい」性質を持っています。これらの点に運営事業者が気がついていないとサービスそのものに大きく影響します。

● システムを作ってあとは利用者に丸投げの行く末

 コミュニティサイトを開設さえすれば、あとは利用者によって事業がうまくいくわけではありません。運営側もそれは熟知しているでしょうが、発展・成長させていく具体的な構想や方針を固めずにサービスをスタートしてもしだいに利用者離れが進み、手をこまねいていればその勢いは加速します。特に同業サイトと比べて魅力のあるサービスが提供されていなければ衰退の歯止めはかかりません。「まぐネット」がその一例で、読者とのコミュニケーションをはかる大儀だけでその後の発展が見られず、機能の充実もされなければキャンペーンのような企画すらありませんでした。これでは作っただけのサービスにすぎません。私も当初は利用しましたが一ヶ月程度でログインせず、すっかり忘却の彼方の存在となっていました。

● 快適なサーバー環境の維持体制不備は利用者離れの引き金

 ウェブサービスでは画面表示や設定処理に快適な応答性が求められます。過負荷によるサーバーダウンを頻繁に起こせば信用を失い死活問題になります。サーバーの台数だけでなく、運用を管理する技術者の能力もサービス運営に欠かせません。安定かつ快適なサーバー運用には維持費、人件費共に費用がかかりますが、おろそかになることは利用者に事業の存続を疑問視されかねません。カフェスタもサーバーダウンが相次ぎ、利用客に不信を抱かれていた経緯があります。それだけに、いかに技術力のある運営体制を整えるかが事業の将来に重要であるかうかがえます。

● 広告に依存した事業運営

 ネット事業では広告収入を基本とした事業展開をするケースが多いですが、広告収入に依存しすぎるのは危険です。広告収入は経済情勢に左右されやすく、さらにサイトの人気やアクセス頻度、広告効果により大きく左右されます。景気のよいときは広告による宣伝を大々的に打ち出すため需要が高まり収益は上がりますが、ひとたび不況に陥れば需要は急激に落ち込みます。またサイト自体に人気がなくなれば取引先の撤退も加速します。広告収入は不安定要素が大きいため、依存した財務基盤は破たんを招きます。広告以外の収入基盤を整えていないサイトは短命を余儀なくされます。

● 企業のイメージダウンを招けば致命的

 事業上の問題が発覚し、マスコミなどで報じられればたちまち評判は落ちてイメージダウンします。その結果、利用者離れやスポンサーの撤退が連鎖的に生じ、再建にめどが立たなくなれば会社そのものが破たんします。「ゆびとま」は開設当初はインターネット事業の旗手的存在でしたが、経営において暴力団がらみの問題が発覚した後は事業売却や移譲を転々とし、最終的には突然の閉鎖に追い込まれました。経営においてイメージダウンは致命傷となるだけに、経営陣の姿勢しだいで人気サイトの命運は大きく揺らぐことを思い知らされます。

● 廃止後の個人情報の扱いは?

 コミュニティサイトでは閉鎖後に運営会社自身で利用者の個人情報をきちんと破棄してくれるか気がかりです。TRUSTeなどの機関のお墨付きをもらっているところでは厳しい基準に従って確実に処理されるのでしょうが、それでも一抹の不安は残ります。東京三菱UFJ証券の元部長代理が顧客情報を不正に引き出し名簿業者に売り渡す事件が明るみに出ているだけに、個人情報を扱う会社が破たんした場合の情報流出は利用者にとって常に頭をよぎる問題です。

 最近の相次ぐコミュニティサイトのサービス終了は、運営会社の事業に対するビジョン、インフラ、財務基盤、そして健全経営がその後の発展に明暗を分けることを示唆しています。今後も同業会社の淘汰が進むことが予想されるだけに、利用者にとって無関心ではいられません。


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2009年6月28日発行 第297号


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