ML weekly
バックナンバー

コラム:ネタという言葉の使い方を考える


 とりわけネット掲示板で目にする「ネタ」という表現、読んでいてその意味が本来の使い方と違う気がして気になっていました。昨今、日本語の乱れが著しく社会問題とされています。その代表例の一つと言えるのではないでしょうか?
 今回は、「ネタ」という本来の使い方と誤った使い方について取りあげてみます。

○ もともと「ネタ」とは

 ネタとは、題材や材料という意味で、「種」を逆読みして俗語にした表現です。たとえば
    「話のネタに、この間開店した店に行ってみたよ。」
このように、あとで会話の題材としてという意味でネタという表現を使います。この場合、ネタという表現をタネに置き換えても通じます。ところが、近頃では
  • 「彼、昨日○○さんとデートしたんだって?」
    「それネタだよ」

  • 「俺はネタで生きるんだ」

  • 「ネタで仮病しちゃおうかな」
これらのように、ネタという意味が何を指すのか本質とはかけ離れていて理解できない使われ方をされています。題材という意味でもなければ、タネに置き換えて意味が通じる表現でもありません。

○ 昨今のネタという意味

 私自身、ずっと不思議に思っていましたが、最近のネタという表現は次のような意味で使われているのではないでしょうか?
  • でたらめやうそという意味で使われる「ガセネタ」の略
  • 作り話
  • ひやかしや遊びという意味での表現
  • シャレの意味と混同
  • 冗談
おおむね、これらで置き換えると意味合いが受け取れます。しかしながら、本来の意味とはかけ離れており、言葉の解釈の違いから意思疎通があわない問題が生じます0。ガセネタにしても、「ガセ」という言葉がついているからこそ意味が通じるのであって、単に「ネタ」だけでは真意が読みとれないのです。

○ 「〜のネタ」と使うのが基本

 ネタという言葉は、話のネタのように「〜の」と前置きがつくのが普通です。なぜなら何の題材かという前提がなければネタという意味をなさないからです。現状は、単にネタという言葉を伝えたい側だけがわかっている使い方をして相手に使っています。そのためー0お受け手は、わかっているようでわからない言葉を聞き流す形であいまいに解釈することになるのです。

○ 日本語の乱れと国語力の低下

 昨今のネット社会の普及は、文字入力の手間を省くために簡易的な表現を多用します。その結果、あいまいな表現が多くなっています。その代表例がこの「ネタ」ではないでしょうか。また、本来簡潔に表現するのであれば、的確な日本語表現をしなくてはなりません。しかし、そのための国語力が若年層になればなるほど低下しているのではないでしょうか?「うざい」、「キモイ」といった表現が氾濫するのも表現力の低下が影響していると言えます。きちんとした日本語を使う習慣そのものが失われては、コミュニケーションそのものが円滑にできなくなります。それは、人と関わり合いをもつ実生活そのものに多大な影響を及ぼすでしょう。

○ ネットはきちんとした表現でやりとりを

 文字でのコミュニケーションが基本であるインターネットでは、相手に自分の意志を的確な表現を使わなければ、自分の意志を伝えられません。だからこそ、貴とんとした日本語表現が必要なのです。「ネタ」のような受け手側にどう受け取ってよいのか曖昧になる表現を当たり前に使っているのでは、誤解を招いたり以心伝心そのものがままなりません。きちんとした表現をした書物に目を通したり、新聞やニュースなど日本語表現が適切なメディアから知識を得る努力は欠かせないと言えるでしょう。
 人間関係が軽薄していくと危惧される昨今のコミュニケーション、そうならないためにも適切な日本語表現を身につけていきたいところです。



2006年 10月28日発行 第265号

前の記事   記事一覧   次の記事
全バックナンバー

MLweeklyトップページ



「メーリングリスト週刊情報誌MLweekly」
「メーリングリストインフォメーションストリート」
(C) 1998-2020 by A. SATO, All rights reserved.
当サイトの内容を無断転載することを禁じます。