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コラム:ライブドア事件とモラル


 ホリエモンの愛称で新時代のキーパーソンともてはやされた堀江貴文氏の、証券取引法違反容疑の逮捕事件は私にとって大変衝撃的なニュースでした。堀江氏が起業しはじめた同じ年、私もメーリングリストのサイトを開設しベンチャーブームに相まって各方面から問い合わせや提携をもちかかけられ活動を活発にしながら、現在にいたるまでとなりました。私は利益を目的としない個人運営で活動を続けていますが、歩調をともにしていただけに、なにか痛切な思いがあります。
 ルールを無視した横柄な手法が問われており、モラルを改めて見直されようとしています。今回は、モラルに焦点を当てて、今回の事件と関連しながら思うところを書きます。いささか散漫な文章になりますが、どうかお許しください。

○ 自分さえよければなにをしてもよいという最近の考えを問う

 特に20代以下の若者が平然と口にするのが、「自分さえよければ人がどうなろうがかまわない」という物事の考えです。先日もある場面で平然と口にした人がいたので一喝したのですが、他人の立場を考えない行動が黙認されていたのが今回の暴走的な行為に発展させたのではないでしょうか。人の気持ちを考えた行動を日常生活で軽視したり、自己中心的な振る舞いをしてもおとがめなしというのは道徳面において後ろ指をさされます。日常生活では厳しくしかられることでその重みを知りますが、最近ではそれをする人もいなければ、した人が逆に悪者のような扱いをされる場合もあります。放任は結局その人のためになりませんし、またそのために大勢の人が悲しむ結末もあります。私たち自身が見直すべき何かを今回の事件で暗示させられたのではないでしょうか?

○ 人の心を軽んじるなかれ

 「人の心はお金で買える」という名言が批判を浴びています。私も甘いなと言う一言でした。お金で人を操ったつもりになるというのが私の考えですが、よく映画やドラマの結末でお金だけの関係の人がみな去っていくのは現実でも必ず起きます。人の心は単純ではありません。恨みを買えばそのしっぺがえしは計り知れないものがあります。一歩間違えば殺されるかもしれません。人の気持ちのわかる人が近頃少なくなった気がするのです。無神経な言動を平然としたり、人の不幸をあざ笑う人、特にネット上でその振る舞いが歯止めをかけられず日常生活でも当たり前と扱われるとしたらそれは顧みなければなりません。今回の事件の引き金も、こうした人の心を軽視した隙があったのではなかろうかと思うところがあります。

○ 「何をやってもよい」への警笛

 以前、このメルマガの編集後記で取りあげたか、あるいは書かずにいたか忘れてしまったのですが、ニッポン放送の株価獲得のとき、ふと思ったことがあるのです。何か革命的な行動をするときは、出し抜くなどあっといわせる方法をとるしかない。けれども、こうした手口はなにをしてもおかまいなしというモラルが無くなると危惧していました。当時は今までの古い体質を打破するためにはこうした方法が必要なのでなと思い、モラルについては一歩退けていました。しかし、今となると自制のかからないモラルを無視した振る舞いは最後には悪い結末を生むのだなと一考しています。

 いろいろと書いてきましたが、今回の事件を通じて、モラルの大切さを誰かが厳しく教える必要性を日常生活全体に求められているのではないかと考えます。最後に、堀江氏が成し遂げた功績、とりわけ既存の古い体質を革新させていったのは評価したいのです。これから先、また違った形で風雲児のような人物が登場するでしょう。そういう異端児を潰す社会にだけはなってほしくはありません。逮捕のニュースを聞いたとき、出る杭は打つのような人材を葬り去る風潮がまかり通らないことを危惧しました。この事件をきっかけに時代を切り開く人を応援する気持ちは変わらずもってほしいと願うばかりです。


2006年1月26日発行 第256号

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