ML weekly
バックナンバー

特集:素人が失敗しないクラウドソーシングでの働き方

Yahoo!ブックマークに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote twitterに投稿
 ここ数年、クラウドソーシングという新しい仕事の仕方が脚光を浴びています。クラウドソーシングは仕事の発注から作業担当者の募集、そして納品までをすべてインターネット上で行う業務形態で、会社勤めをしない新しい働き方を実現できます。さまざまな事情で職が得られない人にとって、クラウドソーシングは収入を得る千載一遇の好機とばかりに、右も左もわからぬまま登録するケースも増えています。

 ところが、これといった特技をもたない人が安易な気持ちでクラウドソーシングで仕事を引き受けると、納期までに仕事が間に合わずに、途中で契約を打ち切られるトラブルが相次いでいます。また、ネットの裏事情を知らないばかりに、想像とはかけ離れた仕事をさせられ自らの手を汚すこともあります。

 今回の特集は、クラウドソーシングとはどんな働き方なのか、そして、素人が仕事を請け負う際の注意や心構えについて取りあげます。

※ 追記 ※

 初心者向けクラウドソーシング入門書を電子書籍として出版しました。

 クラウドソーシングを運営する「クラウドワークス」に特化し、内容をさらに充実させた最新刊も発行しました。クラウドワークス公認版として、前著と同じくインプレスより出版しました。

 Kindle版はアプリを使えば、iOS, Android端末でも読むことができます。

<クラウドソーシングとは>

 クラウドソーシングとは、業務を外注(アウトソーシング)するための新たな手法です。一般に自社でまかなえない仕事を外注するとき、専門の業者に依頼して業務を委託します。クラウドソーシングは、専門会社ではなくインターネット中の人に依頼して作業をしてもらうのです。

 クラウドソーシングを利用するときは、発注側、受注側ともにクラウドソーシングを運営する会社に登録します。両者ともに登録は無料です。仕事を依頼するときは、発注側が業務内容と報酬を提示してクラウドソーシング内で募集します。受注側は募集内容を見て応募します。双方の間で条件交渉をを行い、合意すれば契約手続きをします。契約成立後、受注側は要求された作業を開始します。納品を済ませ、検収が完了すると発注者は運営会社を通して受注者へ報酬を支払います。その際、運営会社は報酬の一部を手数料として徴収します。受注側は手数料を差し引いた分を報酬として受け取り、一連の作業は終了します。

 クラウドソーシングはすべての業務をインターネット上で行えるので、会社勤めをしていない人でも仕事を引き受けられます。フリーランスで働く人をはじめ、在宅ワークの主婦、フリーターなど個人で仕事を請け負う人には絶好の働き方を実現してくれます。クラウドソーシングはアメリカではすでに活発で、10年前から普及していました。日本では最近になって立ち上がりはじめまたばかりの状況です。新しい働き方として注目されはじめたこともあり、新規参入を進めている会社が増えつつあります。

 クラウドソーシングのクラウドは英語で群衆という意味で、crowdと書きます。インターネット上のサーバーシステムを雲にたとえたクラウドを意味するcloudではありません。カタカナで書くとどちらも同じなので混同しないようにしてください。

<クラウドソーシングでできる仕事>

 クラウドソーシングで扱われている仕事は、専門技能が必要なプロ向けと、単純作業を主体とした一般向けに分けられます。

 プロ向けは、会社のロゴやウェブサイトの作成といったクリエイターや、ソフトウェアの開発を手がけるプログラマー、翻訳や通訳など、専門技能をもったエキスパートがこなす仕事ばかりです。とても素人では務まりません。

 一般向けは、データ入力やテープ起こし、検索サイトを使ってのデータ収集といった単純作業が中心です。ほかにも、ブログの代筆や作文程度の文章作成、下書き原稿の修正・校正作業もあります。未経験でもできる仕事が大半ですが、量をこなすものが多いです。

<代表的なクラウドソーシングサービス>

 クラウドソーシングを運営する会社は、一般向け専門、一般とプロ向けの併設、プロ専門の三種類があります。

 一般向けの仕事を専門に提供するクラウドソーシングサービスは、独自のシステムを用意してブラウザで記事作成やデータ入力ができます。面倒な契約手続きをせずに即作業ができるので、簡単に仕事を進められます。ただし、一般向けのクラウドソーシングは報酬がきわめて安く、家計を支える収入は得られません。、

 専門技能を持たない人は、クラウドソーシングの仕組みを理解するだけでも苦労します。まずは一般向け専門のサービスからの利用をおすすめします。慣れてきたら、併設型のサービスに登録するのがよいです。

● 一般向け専門

・ Shinobiライティング

 特定のテーマとキーワードを盛り込んだ記事を作成する仕事が専門のサービスです。はじめてライティング活動をするのに向いています。下書き保存機能もついているので、途中で作業を中断してあとから再開することもできます。

・ ブログ広告.com

 特定のテーマとキーワードを盛り込んだ記事を作成すると報酬がもらえます。単発の記事作成のほかに、日記をまとめて納品する仕事もあります。わずかですが、キーワード検索をする単純作業もあります。

・ CROWD

 特定のテーマでの原稿作成や、アプリのレビュー、テキスト入力など多彩な仕事を提供しています。テキスト入力はブラウザ上で作業できるので、テキスト入力作業が未経験の人にはよい練習になります。

・ Yahoo!クラウドソーシング

 ヤフーが運営するクラウドソーシングサービスで、作業を行うとTポイントがもらえます。主な作業は、アンケートや単語の意味、画像に何が写っているかなど、人が判断して回答するするものがほとんどです。作業結果はYahooの検索精度の向上につなげています。クラウドソーシングの中では最も仕事が簡単ですが、報酬はきわめて少ないです。

・ nanapiワークス

 料理のレシピや日常生活向上の知恵を紹介する記事を募集しています。在宅ワーカーを目指したい専業主婦が気軽に始めやすいクラウドソーシングサービスです。

● 一般・プロ向け併設

・  ランサーズ

 プロ向けはデザインやウェブサイトの制作、アプリの開発やサーバー保守と幅広い仕事を数多く掲載しています。一般向けはブログ掲載用の記事執筆が多く、ネットショップの登録代行やテキスト入力の作業も頻繁にあります。また、契約手続き不要で単発の仕事ができるすタスク形式の募集もあります。

・ クラウドワークス

 ランサーズと並ぶ日本の代表的なクラウドソーシングサービスで、プロ向けの仕事はデザインやウェブサイト、アプリ開発が中心です。一般向けはブログ用の原稿作成が大半を占めています。特定の企業と機密保持契約を結んでから行う特別な仕事もあります。

・ Job-Hub

 しくみや内容はランサーズやクラウドワークスと同じですが、全体的にプロ向けの雰囲気が強いです。特定分野の専門技能をもつ人が多く登録しています。ロゴ作成やウェブサイト制作の仕事が多く、それ以外はあまり募集がありません。人材会社のパソナテックが運営。

・ TALENT

 IT企業として長年の実績を持つ株式会社フルスピードが運営するクラウドソーシングサービス。オープンしたばかりの新進気鋭のサービスです。Job-Hubと同様のサービスを展開する模様です。

● プロ向け専門

・ CREAMi

 クリエイター専門のクラウドソーシングで、デザインや映像に特化した技能を持つ人が登録しています。プロ意識の強い人が集まっているサービスです。

・ Gengo

 翻訳を専門に扱うクラウドソーシングで、英語だけでなく中国語など多言語のスペシャリストを集めています。質の高い翻訳を提供するために、採用されるには厳格なテストに合格しなければなりません。

 プロ向けのクラウドソーシングはほかにもたくさんあります。次のページに詳しく紹介されています。

<仕事を引き受ける際に注意すべきこと>

 専門的な技能のない人がクラウドソーシングで仕事をする際は注意が必要です。未経験でもできそうな仕事ほど実際は想像以上に大変です。納期までに仕事が間に合わない事態も起こりかねません。

 また、誰でもできる仕事は健全なものばかりではありません。中にはネットの裏家業のようなものもあります。何も知らずにこうした仕事に手を出してしまうと、自分の軽率さに後悔します。

 クラウドソーシングの仕事は簡単なようで簡単ではありません。遊び半分の中途半端な気持ちではなく、きちんと仕事を請け負う心構えが必要です。次の点はきちんと踏まえて応募してください。

● 仕事を引き受ける際の基本事項

・ 素性のわからない発注者からの仕事は引き受けない

 仕事に応募するときは必ず発注者のプロフィールを確認しましょう。法人であればどんな会社であるかを情報収集しておくのは大切です。ホームページのアドレスが明記してあれば必ず訪問して業務内容や会社概要に目を通しておきましょう。個人の場合も同様です。自己紹介が何も書いてなければ素性がわかりません。報酬金額だけでなく、相手の情報をきちんと調べておくのは重要です。

・ 契約前に仕事内容や報酬をきちんと把握する

 応募の際は、仕事内容を理解して納品したものがどのように使われるのかを聞き出すようにしてください。目的や用途がわからないまま作業をして納品すると、不本意な使われ方をされている場合があります。最悪、詐欺など犯罪の片棒を担ぐ仕事をしてしまうのもなきにしもあらずです。

 報酬の支払いもきちんとお互いが合意した上で契約しましょう。納品後、修正を何度も要求された場合、報酬の扱いはどうするかなど、細かな取り決めをしておかないと労力に見合わない仕事をしなければなりません。

・ ワープロと表計算ソフトの基本操作ができること

 どんな仕事であれ、ワープロと表計算ソフトの基本操作ができることは最低限必要です。マイクロソフトのOfficeはパソコンに入れていつでも使えるようにしてください。メモ帳やテキストエディタだけでできる仕事でも同様です。Excelのファイルでチェックシートが送られてきたり、作業マニュアルもPDFではなくWordファイルのときがしばしばあります。

 パソコンにオフィス系ソフトがないときは、低価格ででマイクロソフトオフィスと互換性のある「KINGSOFT Office」を入れておくと便利です。

 マイクロソフトのオンラインストアではダウンロード版を販売しています。

・ 報連相やビジネスマナーはきちんとわきまえる

 契約後はこまめに作業の進捗をやり取りすることになります。業務で欠かせない報連相(報告、連絡、相談)はきちんと行わなければなりません。そして、納期は必ず守るのが基本です。これらができないようでは仕事は務まりません。途中で投げ出したり、催促されてから仕事をするのは論外です。

・ 文字での的確なコミュニケーション力が不可欠

 発注側とのやり取りは基本的に文字でのコミュニケーションが中心です。自分が伝えたいことは文字で的確に伝えなければなりません。筋道を立てた文章力が身についていなければ以心伝心がかみ合わず、頻繁に行き違いやトラブルが起こります。自分だけがわかるような言葉を並べるようでは仕事にはなりません。

 相手への言葉遣いも大切です。初対面の人に失礼のない言葉遣いができなければ気持ちよく仕事はできません。お礼や挨拶を含め、人と接する際のコミュニケーション力を持ち備えておくのは不可欠です。

 最近目立つ次の言葉遣いは特に気をつけてください。

● 仕事別の注意点

・ テキスト入力は簡単ではない!

 特技がなくてもこれならできると考えるのがテキスト入力です。しかし、テキスト入力の仕事は甘くはありません。短時間で正確にタイピングできなければ務まりません。テキスト入力の仕事が未経験であれば、自分の能力を知るためにも以下のサイトで腕試しをしてみてください。

 いざ作業を始めると読めない漢字がたくさん出てきます。たとえば、「躊躇(ちゅうちょ)」、「煽てる(おだてる)」などです。名刺を入力する仕事では、読めない人名や地名が出てくるのは日常茶飯事です。かなで入力できないときは、漢字変換ソフトの部首変換や手書き機能を駆使するか、電子辞書で調べて打ち込まなければなりません。入力せずに納品するのは許されません。

 依頼された原本が活字とは限りません。手書き原稿をテキストにする場合もあります。崩し字や汚い字があっても正確に読み取らなければならないため骨が折れます。

 素人が安易に手を出すと、時間ばかりかかって割があわないのがテキスト入力であることをあらかじめふまえておいてください。

・ 情報商材には手を出すべからず

 仕事を探していると、情報商材のライター募集というのをよく見かけます。情報商材とは何かを知らない人は絶対にこのたぐいの仕事には手を出してはいけません。

 情報商材とは、その名の通り情報を売り物にした商品です。特に気をつけたいのが、「楽してお金を稼ぐ方法」や「私はこうして成功を遂げた」など、これを読めばあなたに幸福をもたらすと言わんばかりのいかがわしいタイトルをつけた有料の情報です。このような情報商材は高額な金額で販売しています。ところが購入して読んでみると、ありきたりで中身が薄く、騙された気分になります。そのため、詐欺商法というイメージが強く、情報商材は悪というレッテルが貼られています。

 情報商材の仕事は裏家業に手を染める危険があるだけに請け負わないのが賢明です。

・ メルマガの執筆は内容をきちんと確認する

 メルマガの原稿作成も発注先と事前に打ち合わせてから契約してください。不本意な仕事を引き受けることになりかねません。

 メルマガは内容だけで判断するのではなく、主旨や配布方法をきちんと聞き出しておくのが必要です。出会い系サイトへの勧誘であったり、前述の情報商材を売り込むための宣伝であるかもしれません。

 顧客向けのメルマガであれば必ず発注側のサイトを閲覧し、引き受けても大丈夫か自分自身で確認するようにしてください。

・ ブログの代筆は薄給でやりがいのない仕事

 ブログの執筆代行や特定のテーマでの記事作成の仕事は無数にあります。しかし、応募状況を見ると人気がなく、最初は不思議に思うはずです。実は、こうした仕事は割があわず、やりがいもないです。

 募集しているブログ記事は、情報価値のある読み物ではなく、検索サイトで発注者の運営するサイトを上位に表示させるための素材として使われます。つまり、人に読んでもらうのではなく、機械の機嫌を取ることが目的なのです。このような検索サイトへの対策を検索エンジン最適化、略してSEOといいます。テーマを決めた記事の場合は、特定のキーワードを盛り込むなど細かな要求をしています。これはまさにSEOのためなのです。

 報酬単価もかなり安いです。400字で日記の場合30円、テーマ記事でも100円あればよいほうです。原稿をひとつ書いても缶ジュース一本も飲めず、せいぜい駄菓子が買える程度のお金にしかなりません。それゆえに、このような記事作成は「駄菓子作業」と呼ばれています。中には、駄菓子作業で記事を100本納品するよう要求する無謀な発注者もいます。安易に手を出せば途中で疲弊して手に負えなくなります。

 自分の原稿をたくさんの人に見てもらえるチャンスと純粋な気持ちで取り組むと、あとで現状を知り失望感を味わいます。よほど気持ちを割り切らない限り、おすすめできない仕事です。プロのライターは原稿の相場を知っているのでこの手の仕事は一切手を出しません。

<甘い幻想を抱かないこと>

 収入のあてのない人や副収入を得たい人にとって、クラウドソーシングは仕事にありつけるまたとないチャンスと思いがちです。手に職がなくても仕事にありつけると夢見心地でクラウドソーシングに飛びつく人も少なくありません。

 しかし、厳しいですがどんな簡単な仕事であれ、満足な技能をもたない人がクラウドソーシングで仕事を得るのはきわめて難しいです。棚ぼた式に仕事が巡ってくるものではないことをあらかじめ肝に銘じておいてください。

 クラウドソーシングは言い換えればオーディション会場と同じなのです。募集を見て応募する人は自分と同じ立場ではありません。その道のプロやセミプロが勢揃いしています。応募の際は実務経験を提示して仕事を得ようと積極的にアピールしています。選考時、そのような腕のある人たちと技能を持たない人が台頭に見てくれるはずがありません。仕事を発注した側は当然実務経験のある人を優先するでしょう。

 そしてもう一つ自覚してほしい点があります。クラウドソーシングは技能を身につけるための練習の場ではありません。クラウドソーシングは自分の持っている技能で仕事をこなして対価を得る場です。技能がないからここで練習もかねて仕事をしつつ経験を積んでいこうなんて甘いにもほどがあります。そのような考えの人を発注者側は好んで採用してくれるでしょうか。安心して仕事を任せられないと判断するはずです。

 取り柄がなくても仕事にありつけると夢物語を描いてクラウドソーシングに登録した人は、いくら応募しても採用されずにただ指をくわえているのが現状です。あげくに、自分にできる仕事がないと嘆いて他人に助言を求めるようでは話になりません。クラウドソーシングで仕事をするにはプロ意識が必要です。特技がなければ、まず自分が対価を得られる技能は何かを把握することからはじめなければなりません。そして、技能が未熟と思えば時間をかけて習得し、腕を磨く努力をしてください。自ずと手に職がついてきます。クラウドソーシングで仕事をするのはそれからでも遅くはありません。

 クラウドソーシングは、会社に縛られない未来の働き方と夢のあるうたい文句を並べて紹介されています。しかし、実際はフリーで働くプロの戦場です。意気込みや誠意だけで仕事はもらえません。素人がクラウドソーシングで仕事をしていこうと決めたなら、自身が思い描いている甘い考えを捨て、現実を見据えた努力をしていかなければ何も得られないと思ってください。


★★ 感想をお聞かせください ★★
1. 役に立った 2. まあよかった 3. いまひとつだった 4. 興味がなかった
クリックはひとつのみでお願いします。集計結果は表示されません。


    <関連記事>

    2013年7月11日発行 第348号

前の記事   記事一覧   次の記事
全バックナンバー

MLweeklyトップページ



「メーリングリスト週刊情報誌MLweekly」
「メーリングリストインフォメーションストリート」
(C) 1998-2018 by A. SATO, All rights reserved.
当サイトの内容を無断転載することを禁じます。