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コラム:「困惑させる情報は流すな」震災が教えたIT社会への教訓

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 2011年3月11日に突如襲った東日本大震災は、日本国内のみならず世界中が地震、津波、原発事故という未曾有の複合災害を目の当たりにしました。その情報は地震発生直後からインターネット中で流れ、被災地の様子や状況だけでなく、被災地以外での混乱や心の不安などありとあらゆる内容であふれかえりました。

 パソコンや携帯端末が普及し、大勢の人が情報を発信・共有できるサービスが普及した現代のIT社会に、今回の震災は戒めを込めた大きな教訓を与えました。それは

    「困惑させる情報は流すな」

です。

● ささいな一言がデマの発信源に

 ネットに流れた情報は、被災地での人命救助につながる有益なものは数多くありました。

 その一方で、自らの不安から生み出した軽率な一言がデマをもたらしたり、意図的な扇動を促す作り話や、無責任な言動が横行する事態も招きました。その結果、ネットから情報を得た人は真実と勘違いして動揺したり、鵜呑みにして心を振り回されれ、ついには何を信じてよいかわからなくなるほどの疑心暗鬼や混乱も生じました。

 ITサービスが進歩した現代では、ブログやtwitterで根拠もない憶測を投稿するとそれがまたたく間に大勢の人に知れ渡ります。ソーシャルボタンの「いいね!」や、twitterのリツイートをするだけで簡単に広まるからです。

 たとえば、こんな情報が流れたとします。

    「さっきの余震は次の大地震の予兆だ」
    「市販のこの薬を飲めば内部被曝を予防できる」
    「山一帯に黄色い粉が見えるけどあれはプルトニウムだ」

 こういった情報は、専門知識があれば内容を分別して事実かでたらめかを容易に判断できます。しかし、専門分野外の人は動揺して信じ込んでしまいます。まして、衝撃的な出来事を目の当たりにした状況では冷静な判断も困難です。

● 不安な一言は一人歩きして事実化する

 経験したこともない災害を目の当たりにしたとき、不安や恐怖を抱くのは誰しも同じです。大地震の場合、その後も大きな余震がどこかで発生します。精神的に不安定なままの状態でネットに投稿すると、後先を考えない不用意な言動をしてしまい、誤解を招く発言を広める原因につながります。

 たとえば、余震の直後に次のような投稿をしたとします。

    「震源地が異なる余震は新たな巨大地震を誘発する前ぶれか?」

 動揺して頭の整理がつかない状況では、同じような恐怖や不安を持つ人が目にすると、共感して話がふくれあがる危険があります。すると、具体的な根拠もない不安から生まれた作り話が一人歩きして広がっていくのです。

    「明日にはもっと大きな地震が来ると誰か言ってた。」
    「有名な地震学者の仮説通りだ。明日までにみんな逃げろ。」

 混乱した状況下では、不用意な発言が思いもよらぬ形に化けて広まります。収拾がつかなくなればそれこそ大勢の人が翻弄される事態を招きます。

 災害時に軽率な言動は混乱を招く元凶です。想像や思いつき、不確かな知識をもとにした情報を安易にネットに流せばデマを生み出し、情報災害という人災ををもたらします。

● 無責任な流言は言語道断

 災害が起きると必ずといっていいほど出没するのが愉快犯です。意図的にでっち上げた作り話を振れ回し、傍観してはそのありさまを楽しむ不心得な輩です。

 自分は安全なところにいて、いたずらに不安を煽る不謹慎な行為は、あとで冗談では済まされません。成人は当然のこと、未成年でも許されません。当事者の感情を逆なでする行為は、人として最低のレッテルを貼られます。

 ネットでは情報の発信元や投稿者をすぐに突き止めるのは困難です。だからこそ、非常時にネットで意図的な流言やデマを広めることは断じてしてはならないのです。

● マスコミは状況報道に専念すべき

 人を困惑させる情報を流さないのは、個人だけに限りません。テレビ局や新聞社の報道も同じです。現代はマスコミだけが情報を発信する時代ではありません。マスコミが世論を作り出すことができたのは過去の時代です。ネットを通じてさまざまな情報や見解が得られ、分析できるのが現代のIT社会です。組織的に世論を操作するような偏った報道をしても意図を見抜かれます。現状報道に徹することが報道機関が果たすIT社会への役割であると私は強く訴えたいです。

● IT社会で一人一人がなすべきは不用意な言動を慎む

 大正時代に起きた関東大震災でもデマや流言飛語が広まり、不幸な出来事に発展した事件もありました。また、インターネットが普及し始めだした阪神淡路大震災のときもチェーンメールが広まりました。そして、今回の東日本大震災でも、情報の氾濫や混乱が人々を動揺させました。

 新聞はあったもののラジオ放送は東京で始まったばかりの大正末期、パソコンと携帯電話が普及し始めた平成初期、そしてスマートフォンやtwitter, SNSなどITメディアが急速に発展した現代、時代が進むにつれ、情報は瞬時に世界中へ、そして大勢の人々へ行き渡るようになりました。情報も企業や公共機関だけではなく、誰もがその場で発信できる時代です。

 平穏なときと同じような気持ちで軽々しくネットへ書き込む内容も、災害時に混乱した状況に書き込めば大勢の人を困惑させ、さらに増長させてしまう危険をはらんでいます。根拠のない情報の一人歩きはIT社会に負の効果をもたらします。

 私たち一人一人が災害時にしてはならないのは不用意な言動を慎むことです。すなわち

    「困惑させる情報は流すな」

なのです。災害などの非常時にネットで不安を煽る軽はずみな書き込みをすれば誰しも過敏に受け止めます。まして、混乱のどさくさにかまけて意図的な流言や扇動行為をもくろむことは許されることではありません。

● 不安を発信するのではなく抑えるのは大きな社会貢献

 テレビで報じられる被災地の映像を見て、胸中に感じた不安や恐怖を誰かに打ち明けたり、聞いてもらいたい心理は誰しも働きます。これから何が起きるのか先行きが見えず、おびえた気持ちになるのは自分一人だけではありません。

 しかし、不安や恐怖は困惑を生み出します。被災地以外の人がその場感情でやみくもに心境をネットに投稿すれば無用な情報が氾濫するだけです。そして、自分では気がつかずにデマを作り出す発端にもつながりかねません。

 災害時に安全なところで見守っている人は自分の思いを踏みとどまり、思いついたことをむやみにネットへ投稿しないのも、IT社会において大きな役割を果たします。感情に振り回されない行動は、困惑させる情報を流さない貢献につながります。

 災害時、私たちが被災者や被災地に向けて最も役に立つ行動が

    「困惑させる情報は流すな」

ではないでしょうか。東日本大震災はその大切さをIT社会への教訓として示唆したといえます。

 追記:災害時に引き起こすデマや流言飛語にだまされないための基礎知識を解説した書籍があります。


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2012年3月28日発行 第332号

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