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特集:メーリングリストビジネス10年の歩み

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 2008年3月にメーリングリストビギナーズコラム、メーリングリストインフォメーションストリートの両サイトが開設10周年を迎えました。メーリングリスト開設の手引きはその一年ほど前にスタートし、今なおたくさんの方に利用されています。この背景には、メーリングリストを事業展開し、ビジネスとして発展してきた多くのベンチャー企業の功績が大きいと言えます。

 メーリングリスト開設の手引きサイト開始10周年を記念して、当初何かあ特別企画を考えていたのですが立ち消えになっておりました。他のサイト開設10周年もかねて、今回は特別企画としてビジネス面から見たメーリングリスト10年の歩みを振り返ってみます。はじまりは1996年からです。

【誕生】 産声を上げたメーリングリスト開設ビジネス(1996〜1999)

 メーリングリストビジネスの始まりは、メーリングリストの開設を提供するサービスが最初でした。1996年といえば、マイクロソフトWindows95が登場し、パソコンが一般家庭に広く普及しはじめた年でした。そして、インターネットプロバイダが続々名乗りを上げ、電話回線を利用したダイヤルアップによるインターネット接続事業がスタートしたばかりでした。

 このころメーリングリストを開設するには、技術系の会社あるいは研究機関に勤務しているネットワーク管理者に依頼するか、自分が勤務先でインターネットを利用できれば自力でサーバーを立ち上げて運用するしかありませんでした。インターネットプロバイダの登場でプロバイダ事業の一環としてメーリングリスト開設サービスが登場し、追加料金を支払うことで自前で設置することなくメーリングリストが開設できるようになりました。その草分けが、IIJ-MC,、Asahiネット、So-net、@Niftyでした。

 一方、プロバイダによるメーリングリスト開設サービスとは別に、新たなビジネスモデルによる事業が生まれました。無料メーリングリスト開設サービスの登場です。ネットビジネスの主流は、利用者からサービス料金を取らないかわりに、スポンサーからの広告料で運営する仕組みを取り入れていました。メーリングリストの開設においても、開設者から利用料を徴収しないかわりに、配送メールに広告を付記して受信者に届けるビジネスが生まれました。メーリングリストは特定の趣味やテーマで開設されるため、それに沿った広告をつければ広告主にとっては宣伝・購買効果につながる発想でした。このビジネスを展開したのが、List.netでした。その後まもなくて、FreeML,、DNS、eGroupsが産声を上げました。

 メーリングリストの事業は1996年よりやや前から始まっていたかもしれませんが、ビジネスとして本格的に始まったのはFreeMLなど大手のサービスが開始されたこの年が適していると考えました。1996年はまさにメーリングリストビジネス元年といえます。この後、ITがキーワードとなり、ITベンチャーが一大ブームを巻き起こりました。

【飛躍】 メーリングリストベンチャーの乱立と弱肉強食(2000〜2002)

 ベンチャーブームの到来とインターネットビジネス開拓の波は多くの無料メーリングリスト開設サービス会社を生み出しました。メーリングリスト開設の手引きのバックアップファイルを掘り返したところ、2002年のメーリングリスト開設プロバイダリストが残っていました。この当時は、次のようなメーリングリストサービスがありました。名称も当時のままです。
 この頃のメーリングリストは、主にMajordomofmlといった有名なメーリングリスト管理ソフトを使って提供されていました。そのため、開設申込みをした人はこれらのソフトの使い方を習得して運用しなければなりませんでした。メーリングリストが飛躍を遂げたのが、この使い勝手の不便さを解消するために管理操作をブラウザとマウス操作による使いやすいシステムとして提供されるようになったときでした。先端を切ったのが当時合資会社であったDNSでした。DNSは株式会社となったインフォキャストでEasyMLを発表、その後FreeMLとeGroupsが相次ぎ独自のシステムでサービスを提供していきました。

 2000年を過ぎた頃から順風満帆のITビジネスもブームから弱肉強食への過酷な道を歩み始めました。先に成長した企業が資本力を武器に他の企業を買収・子会社化して事業を吸収していく弱肉強食の時代が到来しました。競争力の強化でメーリングリストも次第に単独での事業を維持できなくなりました。FreeMLは母体であるGMOグループの一事業に、インフォキャストは楽天へ事業を売却し子会社化、eGroupsはアメリカ本社がYahooに買収され、日本支社もYahoo Japanの事業として統合されました。

 そして訪れたのがIT不況。鰻登りの業績を誇っていたIT企業が軒並み収益を下げ、数多くのベンチャー企業が姿を消していきました。既存のメーリングリスト管理ソフトを使って提供していた無料メーリングリスト開設会社は、広告対収益効果の不振による広告主の減少や、独自システム構築の遅れによる利用者離れ、さらに同業者の乱立により軒並み業績が悪化し、事業撤退や会社存続を断念する結末を迎えました。つかの間の脚光の中、気がつけば弱肉強食による勝ち組と負け組の明暗を分けたITビジネスの非情な時代の幕開けでもありました。無料メーリングリストの草分けでアタList.netもその一つで、事業廃止の道をたどることになりました。先に掲げた当時のメーリングリスト開設サービスも、ほとんどが存在していません。

【低迷】 ブログの普及とメーリングリストの衰退(2003〜2005)

 ブロードバンドサービスが一般家庭でも普及し、常時接続が身近な存在となり始めました。そんな折に登場したのがブログサービスでした。ブログは個人での情報発信とネット上の交流に大きな進歩をもたらしました。ウェブサイトを作るにはソフトやHTMLの知識を習得しなければならなかったのが、ブログでは自分の書きたい内容を書き込むだけで体裁の整ったページを作成でき、気軽に情報発信が簡単にできるようになりました。デジタルカメラの低価格・高性能化により、写真も掲載した表現力のある内容を見せられる利便性もありました。さらに、コメント欄やトラックバックを通じてたくさんの人から評価やコメントをもらえるなど同じ趣向をもつ人とのつながりを簡単にもてるようになりました。メーリングリストはどことなく技術的で難しいイメージを持っており、ブログの登場はメーリングリストの知名度を遠ざけ衰退していきました。

 さらにメーリングリストの衰退に拍車をかけたのがSNSの登場でした。会員制のコミュニティとしてブラウザと使って、自分自身の情報発信をしたりグループを作って仲間を集えるサービスは新たな人脈や人のつながりを築けるきっかけを与えてくれました。ネットでのコミュニティはしだいにSNSに移っていき、個人活動の一環とした形態になっていきました。場を提供する形態のメーリングリストはますます存在が薄くなり、知名度も低くなる一方になりました。まさに、メーリングリストはどん底の時代とも言える時期でした。

 一方、サービスとしてのメーリングリスト事業とは別にインフラとしてのメーリングリスト事業は着々と進歩していました。メールマーケティングとしてのメール配送システムや、社内連絡・コミュニティ構築用として業務用メーリングリストシステムの開発が活発になりました。属性をつけて対象者にメールを高速・大量配信できたり、掲示板とメーリングリストを連携させたシステム、グループウェア機能など高機能なツールに発展してきました。その代表となるのがQuickMLや、FreeMLのシステムをパッケージ化したmelpodでした。

【進化】 メーリングリストの新たな進化(2006〜)

 コミュニケーションを前面に押し出したメーリングリストの活用が低迷する中、転機が訪れました。2006年、SNSとメーリングリストの融合化をFreeMLが実現し、メーリングリストの新たな進化を遂げました。SNSのように個人個人が日記やフォトを公開しながら交流を深めてグループコミュニティを作り、それをメールで配信できるサービスを開始しました。2007年には改良を重ねた完成度の高いSNS、メーリングリスト融合コミュニティであるMLコミュを発表し現在に至っています。しかし、これは単なるメーリングリストとは機能的に脱皮し、どちらかといえばSNSを中心にメーリングリスト機能が備わったシステムで、メーリングリストとはもはや別の存在といってもよいほどです。

 2007年にはこれまた想像のつかない転機が訪れました。携帯メールのツールとしてメーリングリストがもてはやされるようになったのです。特に携帯メールは連絡だけでなく気軽なチャット感覚でも利用され、仲間同士のグループチャットにメーリングリストが使われるようになりました。グループチャットは女子高生やOLに人気を集め、メーリングリストではなくメーリスと呼ばれるほどに広がっていきました。メールの利用が活発な世代にメーリングリストが認知され、ビジネスとしても意義があるとばかり、sugu.CCプリメなど携帯電話対応のメーリングリストサービスが続々登場しました。写メールやデコメールといった携帯ならではの仲間内のメール利用が今なお脚光を浴びています。メディアでも次のような記事でメーリスについて紹介しています。
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 1996年まではインターネットの技術とともにメールやメーリングリストが進歩してきました。インターネットが誰でも使えるようになった1996年からは技術だけでなくビジネスがメーリングリストを発展させていったとまざまざと感じます。メールマーケティングやコミュニティサービスはインターネットビジネスからの派生であり、技術だけでは成り立たなかったと言えるでしょう。

 メーリングリストは今後単独でのビジネスにはなり得ないでしょう。しかし、新たに生まれる技術に取り込まれ進化を遂げて行くに違いありません。SNSとメーリングリストの融合がまさにそうです。これからはセカンドライフのような巨大仮想空間など新たなコミュニティへメーリングリストが何らかの形で一役買うのではないかと考えます。メーリングリストは今後も発展を見守りつつ、探求され続ける存在であってほしいと願っています。

 ※ メーリングリストのより詳細な歴史は下記のバックナンバーをご覧ください。

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