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よもやま話:ニフティのフォーラムが幕を閉じる


 パソコン通信を経験した人であれば一度は利用したことがある@Niftyのフォーラムが、2007年3月31日をもってサービスを終了する運びとなりました。(詳細はこちら

 現在の@Niftyの前身に当たるニフティサーブ(設立当初はエヌ・アイ・エフ株式会社)は、インターネットがまだ広く開放されていない頃に電話回線と独自のホストコンピュータを用意してインターネットのミニチュアのようなネットサービスであるパソコン通信サービスを提供していました。このサービスには掲示板やチャット、ゲーム、データベース、ショッピングなど、プライベートから仕事まで利用できる内容が凝縮されていました。もちろんメールもあります。その中でも特に優れていたのが、フォーラムと呼ばれるコミュニケーションの場でした。これは趣味や仕事などさまざまなジャンルのテーマを設けて、それぞれに興味のある人が集まって情報交換のできる画期的なものでした。

 フォーラムには掲示板やチャットルーム、ソフトや画像を保存できるライブラリ、そして一番の目玉は電子会議室と呼ばれるテーマ別に誰もが意見や情報を書き込めるシステムがありました。特に議論や専門情報の入手、同じ興味をもつ人同士の雑談に電子会議室が利用されていました。フォーラムの会議室によっては一日に何千もの書き込みがあり、とても読み切れないほどでした。

 インターネットが普及するに連れ、パソコン通信という閉鎖的なサービスがすたれていくに連れフォーラムの利用が減少していきました。しかし、私にとってはこのフォーラムがなくなるのは大変残念な思いなのです。

 その理由は、情報の集中場所がなくなる点です。インターネットではポータルサイトのように競って特定の分野の拠点を作ろうと各社がしのぎを削っていますが、情報が分散するばかりでここという場所を築くのは不可能といえます。パソコン通信のよいところは閉ざされた世界だけに情報が集中できた点です。これは今となっては古くて狭いだけの存在に過ぎません。しかしながら、その閉鎖性が故に情報や人を集められたのは有意義でした。

 二点目は、フォーラムは責任者が明確であり、かつ責任ある運営をしていた点です。フォーラムは有志が企画書を提出し、それが認められると開設されました。多いときで200以上のフォーラムができました。フォーラムの運営責任者をシスオペ(システムオペレーターの略)と呼び、シスオペは独自に補佐役であるサブシス(サブシステムオペレーター)やボランティアスタッフを動員できました。これらの人たちでそれぞれのフォーラムの切り盛り、たとえば会議室の盛り上げや、不適切な発言の削除や異動、ライブラリの管理などを行っていました。シスオペは運営に関するすべての権限をもつのと同時に、あらやる運営責任を負う立場だけに、無責任な行動はできませんでした。今のインターネットの掲示板運営のように野放しで管理義務すら自覚しないような状況とは大違いでした。それだけに、無法地帯のような場はほとんど見かけることもなく、健全なネット運営ができていました。

 そして三点目は、フォーラムでの書き込みは必ず利用者IDとハンドル名が明記される仕組みになっていました。ハンドル名は登録時に自分で決めます。今のように誰でも匿名の「名無しさん」のような書き込みはできませんでした。また、会議室での書き込みには利用者IDがつくため、匿名書き込みによる無責任な言動は追求されました。当然、運営側も不適切な書き込みは即座に削除していました。インターネットでは匿名掲示板のように無責任が当然のようにまかり通る場が当たり前の存在となり、またインターネットの性質上、IPのみの経路情報しか得られないため、書き込み者の追跡が不可能です。節度あるコミュニケーションのできる場が作れないのが現状です。責任ある言動が維持できる場を作るには所在を明確に突き止められるシステムが不可欠です。それを実現していたのがパソコン通信上のフォーラムでした。

 私もフォーラム運営に携わった一人であり、そこで学んだネット運営のノウハウをメーリングリストに引き継いでいきました。メーリングリスト開設の手引きにて紹介しているコンテンツもいってみればニフティのフォーラムでの経験そのものなのです。それだけに、今回のフォーラム終了は来るべき日が来たという思いでした。時代の流れに消え去るものとしていつしかは訪れるだろうとわかってはいましたが、いざその日が来ると残念でなりません。懐古的ですが、古き良きものがなくなったという思いです。


2006年7月26日発行 第262号


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