
コラム:匿名という名の暴力(第二回)他の特集とコラムが途中で挟んでしまったため、続編を書くのが滞っておりました。匿名とインターネットに関するコラムの中編をお届けいたします。 ○ 人前で意見が言えない日本人 とりわけ気になるのが、近頃老若男女問わず正面から顔をあわせて自分の意見をきちんと述べる人が少なくなっています。相手に対して自分が思うこと、あるいは要望を相手の目を見て話すことに躊躇する傾向が強く、胸の内にしまって何もしないままになりストレスを蓄積していきます。立場上の問題は今は抜きとして、きちんと意見を自分の言葉で言う能力と勇気、そして相手との関わり方のバランスの取り方を体得する機会が少ないのが原因なのでしょうか。その吐き出し口を別のところに求めてしまうのが日本人独特の特徴なのでしょうか。 ○ 議論や意見を主張する能力の不足 本来であれば自分の言葉で人に言えればよいのですが、さて自分の考えを言葉で表現する機会をどの程度経験していますでしょうか?とりわけこうした意見を述べたり議論をする力が日本人には欠けています。対話でも一方的に主張だけしかできなかったり、反論を極度に恐れるなど、やりとりのしかたもできない人が目につきます。テレビの議論番組でこのような光景が頻繁に見られます。ネット上での議論でも、本論からすぐに脱線したりあるいは焦点とは無関係な話ばかりに固執したり、あるいははぐらかす言動で茶を濁すなど見るに多言えない流れになっていくケースが数多くあります。的確な表現を習得していない、議論のしかたが身についていない、このような状況では人に向かって何かを述べることはできません。それでいて自分を知ってもらいたい願望だけは強く、誰かの後押しがないと自分の意見を貫けない自分本位が現れてきます。 ○ 匿名といじめ 島国国家に多いのが集団で一人を精神的におとしめる「いじめ」といわれています。イギリスも日本のようないじめが多いそうです。さて、自分の胸の内をやはりどこかではき出したい、あるいは自分に同意を求めて味方を作りたい、自分の気に入らない相手をおとしめたい、そういう行動を自分が首謀者とされないで実行しようと考えようとします。いわゆるいじめです。自分を隠して陰湿に他人が不幸になっていくのが喜びと思う卑怯な手口です。それがインターネットで簡単にできてしまうのが匿名掲示板での書き込みです。重大な犯罪に発展する危険のない書き込みでない限り、たいていの場合は書き込んでも削除されず掲示され続けます。自分は所在を隠してそのくせ対象者を特定できるような形で中傷するのは卑怯者のそしりを受けます。まさにいじめを形にした行為であり、大勢の人が目にする場で後ろ指をさされる行為です。このような行為をまかり通してよいはずがありません。日常生活でのいじめが精神的な暴力といわれるように、このようなネット上で他人をおとしめる行為は「言葉の暴力」なのです。 ○ 自分に責任を持つ行動の欠如 インターネットは自分の所在を隠せてしまうだけに、行動に自分で責任を持ち分別をわきまえた自制心が欠かせません。他人を中傷したり、事実無根のうわさやでっち上げ、社会通念上認められない振る舞いは自ら行わない。このような行動がネットではできない人も多いのではないでしょうか。無責任がまかり通るだけに、何をしてもよいと勘違いしているのかもしれません。匿名は無責任の代名詞ではないのです。匿名であるからこそ、責任ある行動をとらなくてはならないのです。それは、「陰湿な喜び」の誘惑に自分が左右されないためでもあるのです。責任ある行動の重要さをインターネットでは特に自覚しておかなければならない、それがいつしか忘れられているように感じます。 ○ 対人関係やコミュニケーション能力の低下 ニュースなどでもよく報じられていますが、今の日本人は対人関係のバランスの取り方、すなわちコミュニケーション力が低下しています。広く人と関わり合っていこうとする人が私の周りでも少ないです。ごく少数の気のあった仲間同士だけのなわばりを作り、その中で自分を維持している人が少なくありません。また、相手を理解する思いやりがだんだん薄れている気がします。他人は他人、自分に害を受けなければそれでいい、どことなく軽薄な対人関係に疑問を感じるときもあります。干渉しなければそれでもよいのですが、そのくせ自分の気に入らない人に対してはその感情を表に出さず小さななわばりの中ではき出す、結局こうした人間関係のあり方が匿名の暴力の元凶ではないかと思うのです。 日常生活での人との関わり合い方をきちんとできていなければインターネットでも通用しないのです。しかし、対話能力が不足していたり対人関係がぎくしゃくしがちな状況ではそれを克服するのは困難です。では、どうしたらよいのでしょうか。第三回は最終回として私なりの模索を書いていきます。
2006年 2月24日発行 第257号
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